「東西美人画の名作」展 【私の1点(中)】 安良岡章夫さん(作曲家、東京芸術大学理事) 老妓の姿 漂う緊張感

梶原緋佐子 「老妓」 大正11年(1922年) 京都国立近代美術館蔵

 この作品には、「或(あ)る日、長年花柳界を生き抜いた老妓(ろうぎ)が鏡を見つめる刹那」ということでは済まされない異様な緊張感が漂う。
 例えば鏡台、団扇(うちわ)、座布団、写楽の役者絵(岩井半四郎)などが画面の隅々で切り取られ、老妓のみが全身を描かれることによって見る者を注視させる効果は秀逸。また、岩井半四郎の意味ありげな視線、彼女のまなざし、手先の櫛(くし)が左斜め下に向かって一直線に連なり、画面の右隅に向かううなじと背筋の引き締まったラインとのコントラストを成すこと等々、極めて周到に構築されたことに起因するのであろう。
 しかし分析的な見方をすればするほど、老妓が鏡に映る自らに何を想(おも)うのか、見る者の想像力を掻(か)き立てる。会場にて異彩を放つ一点。

安良岡章夫さん(作曲家、東京芸術大学理事)

直前の記事

「東西美人画の名作」展 【私の1点(上)】 上村淳之さん(日本画家) 翳りない女性像求め

 私の祖母、松園は一点の翳(かげ)りもない女性像を求めて精進してまいりましたが、この作品「序の舞」は当時の風俗をそのままに描きました。  モデルは松園の息子である松篁の嫁で、私の母です。そっくりな顔から母の昔を思い出すの

続きを読む
新着情報一覧へ戻る