(下)朝顔 ドーム兄弟も魅了

葛飾北斎 『北斎漫画』十五編 1878(明治11)年 墨摺、淡彩摺 浦上蒼穹堂

HOKUSAIが西洋に与えた衝撃
 葛飾北斎は、エミール・ガレやドーム兄弟といったアール・ヌーボーの作家たちにも影響を与えた。19世紀末から20世紀初頭にかけて優雅な装飾を追求した彼らは、北斎の描く動植物を工芸品の図案の参考にした。デザイン性に優れ、生き生きとした描写が新鮮だったからだ。西洋には切り花などを題材にした静物画はあったが、土に根を下ろした植物を主役に据える作品はほとんどなかったのだ。
朝顔は格好の題材だったようで、本展にもガラス器が数点出品されている。

アンリ・ベルジェ(図案)(?)
ドーム兄弟
花器:朝顔
1907-10年頃
ガラス
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、ロンドン
© Victoria and Albert Museum, London

仏ナンシーを拠点としたドーム兄弟の花器も、その一つ。北斎が絡まり合うツルと複雑な向きの花や葉で表した生命感を、大ぶりの花と太く簡潔なツルで表現している。北斎作品から東洋の自然観のエッセンスを抽出し、自作に昇華させている。

直前の記事

(中)モネも捉えた見えない風

無数の懐紙が宙に舞う。めくれ上がったり、波打ったり。葛飾北斎は、一枚一枚に表情をつけて風の動きを見事に捉えた。
 目に見えないものや、波など形の定まらないものをも描き出す「画狂」ぶり。透視図法にのっとった西洋画にはあまり見られない、手前中央に樹木を配して画面を分断する構図。新たな表現を模索していた西洋の画家たちは、北斎の風景画にも衝撃を受けた。

続きを読む
新着情報一覧へ戻る