(中)モネも捉えた見えない風

葛飾北斎 冨嶽三十六景 駿州江尻 1830-33(天保元-4)年頃 横大判錦絵 オーストリア応用美術館、ウィーン MAK-Austrian Museum of Applied Arts/ Contemporary Art, Vienna Photo: © MAK / Georg Mayer

HOKUSAIが西洋に与えた衝撃
 無数の懐紙が宙に舞う。めくれ上がったり、波打ったり。葛飾北斎は、一枚一枚に表情をつけて風の動きを見事に捉えた。
目に見えないものや、波など形の定まらないものをも描き出す「画狂」ぶり。透視図法にのっとった西洋画にはあまり見られない、手前中央に樹木を配して画面を分断する構図。新たな表現を模索していた西洋の画家たちは、北斎の風景画にも衝撃を受けた。

クロード・モネ
アンティーブ岬
1888年
油彩/カンヴァス
愛媛県美術館

「富嶽(ふがく)百景」など北斎作品を数多く所有していた印象派の巨匠、モネもその一人。批評家に「北斎の忠実なライバル」とも評されたモネは、本作で真っ向勝負を挑んだかのようだ。荒々しく描かれた樹木の葉とさざ波が、風を感じさせる。