【第13回】「ハカセとNARIのときめくアート」テンション爆上がり!「幕末土佐の天才絵師 絵金」あべのハルカス美術館で

今回、ハカセとNARIの2人がやってきたのは、大阪のあべのハルカス美術館で6月18日まで開催中の「幕末土佐の天才絵師 絵金」展。
高知県外ではなんと半世紀ぶりとなる絵金の展覧会です。50年前、東京と大阪で絵金の展覧会が開催され、また絵金を主人公とした『闇の中の魑魅魍魎』という映画が封切られるなど、絵金ブームがあったそうです。
今回の絵金の展覧会は、高知県内に散らばる絵金作品を一堂に集め、しかも、あべのハルカス美術館だけで開催される貴重な展覧会です。ハカセとNARIの2人もテンション爆上がりです!

絵金とは、「絵師の金蔵」を略した愛称で、本人が名乗っていたわけではありません。
文化9年(1812年)に絵金は高知城下に生まれたと伝えられています。絵の才能があったことから江戸に留学。河鍋暁斎と同じ師匠の狩野派の前村洞和に学びました。その後、土佐藩家老の御用絵師となる大出世を遂げますが、33歳の頃に城下を追放されてしまいます。原因は謎に包まれていますが、贋作事件に巻き込まれたとの説もあります。

絵金は、芝居絵屏風や絵馬提灯などの作品を多数残しますが、中年以降、どのような生涯を辿ったのかは、実は現在もよくわかっていないのです。明治9年(1876年)に65歳で亡くなりました。

「芝居絵屏風」とは、歌舞伎や浄瑠璃の芝居の場面を二つ折りの屏風に描いたもので、幕末の土佐で大流行し、神社に奉納されました。
夏祭りになると神社や商店街の軒下に飾られる風習は今も続いています。絵金だけでなく、様々な絵師が芝居絵屏風に取り組み、絵金の死後も、昭和のはじめ頃まで描き続けられました。

展示室に入るとまずは《浮世柄比翼稲妻 鈴ヶ森》がお出迎え。血しぶきが飛び散る凄惨な画面に度肝を抜かれます。
描かれるのは四世鶴屋南北作の歌舞伎「浮世柄比翼稲妻」の一場面。お尋ね者の白井権八(向かって左)は、仕置き場のある鈴ヶ森で雲助たちに襲われますが、次々と切り倒します。そのとき、名の知られた侠客、幡随院長兵衛(提灯を持つ男)と居合わせますが、権八に感心した長兵衛は、江戸で再会することを約束するのでした。
「血赤」と呼ばれる絵金独特の鮮やかな赤色にも注目です。
※《浮世柄比翼稲妻 鈴ヶ森》は前期(5月21日まで)の展示。

部屋に入った瞬間、思わず「あっ!」と叫びそうになる空間が眼の前に!
絵馬台が立ち並んだ夏祭りの境内を再現していて、本当にお祭りに来たかのよう。塩冶判官が切腹する場面を描いた《仮名手本忠臣蔵 判官切腹》の迫力たるや、尋常ではありません。塩冶判官の無念の表情が、観る者の胸に迫ります。絵馬台に飾られていると、本当のお芝居を観ているような気分になります。

《手長足長絵馬台》は八王子宮の夏祭りでお目見えする荘厳な雰囲気を持つ巨大な絵馬台。地元の宮大工・原卯平によって造られました。
この絵馬台は氏子さんたちの高齢化などの理由により飾られることが少なく、直近では2019年にまでさかのぼります。絵金作品との見事なコラボレーションを観られる絶好の機会となっています。

絵金は芝居絵屛風だけでなく、絵馬提灯でもその才能を発揮しています。絵馬提灯とは、絵を描いた和紙を箱型の木枠に貼り、箱の中にろうそくを灯して神社の参道などに飾った提灯のことです。
《釜淵双級巴》は、人形浄瑠璃や歌舞伎で演じられた石川五右衛門が主人公の芝居を描いたもの。元は25枚でしたが、残された24枚の作品を新たに絵馬提灯として木枠を新たに作り直しての展示となっています。
五右衛門のストーリーは悪の魅力に満ちていて、ついつい引き込まれてしまいます。釜煎りの後を描いた「第二十五」は、浄瑠璃本文にはない場面で絵金のオリジナル。悪のヒーローである五右衛門の最期を突き放したように描いていて、無常観を感じざるを得ません。絵金の人生観が伝わってくるようです。

展示室にある絵馬台の照明は、昼の見え方と夜の見え方が交互に変化します。夜の照明のときは、夏の夜のお祭りの雰囲気がたっぷり!
絵金の作品に囲まれて夏祭り気分が最高潮になったあとは、あべのハルカスや、周辺のお店でビールと串カツを味わいたくなります。
ハカセとNARIの2人は、いつか高知に行って、夏祭りを楽しみながら、絵金の作品を鑑賞したいと思うのでした。


(アート探訪インスタグラマー、マンガ家・NARI)
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幕末土佐の天才絵師 絵金
会場:あべのハルカス美術館(大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階)
会期:2023年4月22日(土)~6月18日(日)
休館日:5月22日
アクセス:近鉄「大阪阿部野橋」駅西改札、JR「天王寺」駅 中央改札、地下鉄御堂筋線「天王寺」駅 西改札、地下鉄谷町線「天王寺」駅 南西/南東改札、阪堺上町線「天王寺駅前」駅からすぐ
入館料:一般1,600円、大学生・高校生1,200円、小・中学生500円
※詳細、最新情報は、美術館公式サイト(https://www.aham.jp/)、展覧会公式サイト(https://www.ktv.jp/event/ekin/)で確認を。
※前期(~5月21日)、後期(5月23日~)で一部展示替えあり