【第11回】「ハカセとNARIのときめくアート」初めての箱根でポーラ美術館へ 「部屋のみる夢」展やモネの睡蓮などアートを満喫

ハカセとNARIの2人は、初めての箱根にやってきました。旅の一番のお目当ては、美しい箱根の自然と調和したポーラ美術館。約10,000点のコレクションは、西洋絵画、日本の洋画、日本画、ガラス工芸など多岐にわたりますが、それらは、ポーラ創業家2代目の鈴木常司が収集したもの。その質の高さには目を見張るものがあります。近年では現代アートの収集・展示にも力を入れています。今回は、どんなときめくアートと対面できるのでしょうか。

まずは「部屋のみる夢」展

この日は、企画展「部屋のみる夢-ボナールからティルマンス、現代の作家まで」が開催されていました。19世紀から現代に至る、部屋にまつわる表現に特徴のある作家にスポットを当てた展覧会です。

「部屋のみる夢」展は、順路は決められておらず、壁で仕切られた小部屋のようになったスペースを自由に巡るスタイルです。
会場に入ると、アンリ・マティスの作品がお出迎え。マティスは、フランスのニースを拠点にして作品を制作したことで広く知られていますよね。《リュート》は第二次世界大戦中の1943年、マティス74歳の頃の作品で、ニースのレジナ・ホテルで描かれたもの。壁にも絨毯にも色鮮やかな装飾模様があしらわれ、活き活きとした感じがします。

ベルト・モリゾは、印象派の女性画家。印象派の画家たちは、室内のアトリエから戸外へ制作の場を移しました。しかし当時は、中産階級以上の女性が外出する際には、夫などの付添人が必要でした。こうした社会が女性に求める制約の中で、モリゾは、ベランダやバルコニーといった室内と戸外の中間の場所を描くことを選択します。本作《テラスにて》は、モリゾが第3回印象派展に出品した12点の作品のうちのひとつでもあります。

ナビ派は、ゴーギャンの影響を受けたピエール・ボナールやモーリス・ドニらで結成した芸術家集団。「ナビ派」の「ナビ」とは預言者のことで、ナビゲーションの略ではないので、ご注意くださいね。
ボナールの妻マルトは、体が弱く、一日に何度も入浴する習慣があり、ボナールは繰り返しその様子を作品にしています。マルトはあまり社交的ではなく、ボナールと2人きりの生活を好みました。2人は、パリを離れて各地を転々としますが、最後は南仏のル・カネに落ち着いたということです。

「北欧のフェルメール」とも呼ばれるデンマークの画家、ヴィルヘルム・ハマスホイ。光の効果がフェルメールを思わせますが、実は19世紀から20世紀にかけて活躍した画家で、フェルメールよりずっと後の人です。
ハマスホイ作品は、国内では、ポーラ美術館収蔵の《陽光の中で読書する女性、ストランゲーゼ30番地》と、国立西洋美術館収蔵の《ピアノを弾く妻イーダのいる室内》の2点しかありません。貴重な2作品を、同時に観られる絶好のチャンス!
展示室の壁にあしらわれた窓は、ハマスホイの作品ともリンクしています。こちらもお見逃しなく!

名作絵画コーナーでは印象派のスターが勢揃い

ポーラ美術館が収蔵する作品を展示する「ポーラ美術館の名作絵画」のコーナーには、ルノワール、ゴッホ、モネなど、印象派の画家たちの作品がずらり!
しかも傑作ぞろいで、アートファンには堪らない空間となっています。なかでも、この1907年に描かれたモネの《睡蓮》は、数ある《睡蓮》の中でも最上のものではないでしょうか。作品の前で、しばらく時間が過ぎるのを忘れてしまいそうになりました。
また、印象派以外にも、白髪一雄などの戦後の抽象絵画や、レオナール・フジタのコーナーもある充実ぶりでした。

「森の遊歩道」もアートざんまい

ブナやヒメシャラ群生に囲まれた自然溢れる美術館には「森の遊歩道」が整備され、さまざまな彫刻が点在しています。(ハカセくんと歩いたせいか、犬をモチーフにした作品が多いように思いました!)季節によっては、鳥の美しいさえずりが響き渡るそうです。アートと自然が融合したすばらしい遊歩道を、ぜひ体験してみてくださいね。

歩き疲れたら、「カフェ チューン」で一休み。光が降り注ぐ、ポーラ美術館の建築空間に身を置きながら、カフェタイムを楽しむことができます。紅茶を頼んだら、モネの《睡蓮》をあしらったカップが運ばれてきました。観たばかりのモネの《睡蓮》を思い出し、紅茶がより美味しく感じられたのでした。

今回マンガで紹介した作品だけでなく、ポーラ美術館では、ゲルハルト・リヒターや、ロニ・ホーンなど、現代アーティストの傑作も観ることができます。ここでは、誰もがときめくアートと出会えるのです。

(アート探訪インスタグラマー、マンガ家・NARI)
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「部屋のみる夢 ボナールからティルマンス、現代の作家まで」
会場:ポーラ美術館(神奈川県箱根町仙石原小塚山1285)
会期:2023年1月28日(土)~7月2日(日)
休館日:期間中なし
開館時間:9:00–17:00(入館は16:30まで)
入館料:一般 1,800円、シニア割引(65歳以上) 1,600円、大学・高校生 1,300円、中学生以下無料
詳しくは、同館HP

「部屋のみる夢」展の開幕記事はこちら