【和田彩花のカイエ・ド・あーと】第21回 オスカー・ココシュカ

オスカー・ココシュカ

パリでオスカー・ココシュカの展覧会を見に行きました。初めて、ココシュカの作品をまとめてみる機会でした。なんとなく、オーストリアの芸術だからクリムトやシーレとかあの辺りの芸術運動の流れがわかるかな…なんて思いながら展覧会にいってみたのですが、オーストリアの世紀末芸術という文脈だけでは語りきれない画家だと感じました。

フランスでは、革命の歴史と同じくレジスタンス運動について話を聞くことが多いです。今回の展示でも、退廃芸術とみなされたココシュカ作品についての資料や国際的なレジスタンスに参加していたことも展示の一部となっていました。

ココシュカは、ウィーンの芸術運動に影響を受けたところから本格的な画業を始めますが、特定の場所や運動を想像することが難しい画家であるとも感じました。

それから、ココシュカの画業は後半になると画面が明るくなっていくことにも驚きました。

もちろん、ココシュカと聞いてすぐに思い浮かぶ色調の暗い画面でも多くの発見がありました。厚みのある絵の具がカンヴァスに用いられているので、暗い絵の具と混じることなく輝く紫や黄色やピンクの明るさが素敵でした。

前置きが少し長くなってしまったのですが、今回は、豊田市美術館所蔵の《絵筆を持つ自画像》を挙げてみたいと思います。

オスカー・ココシュカ《絵筆を持つ自画像》
オスカー・ココシュカ《絵筆を持つ自画像》 1914年
油彩、カンヴァス 82.3×66.0cm
豊田市美術館蔵
©Fondation Oscar Kokoschka / 
ProLitteris, Zurich & JASPAR, Tokyo, 2022 E4991

本作は、1914年のココシュカの画業のはやい時期に制作させたものです。

背景とココシュカが着ているジャケットの紺色が画面の大部分を占めているので、画面全体はとても暗く感じます。

背景は、筆あとがあまり残らない滑らかさなのに対して、ジャケットの描写では筆あとをところどころ残しながら描いているようです。この作品では、大胆で長めの筆触が多用されているわけではなさそうですが、手や髪の描写の節々にココシュカらしさを感じられるのが楽しいですね。

この自画像では、西洋絵画でよく見かける斜めの姿勢でありながら、黒目だけ鑑賞者の方へ向けている姿が印象的です。私には、ちょっとした不安を感じさせる目の動きに感じます。

これを読んでくださっているみなさんは、この自画像からどんなことを想像しましたか?

日本でオーストリアの世紀末芸術に触れたのは、美術系の番組の特集や企画展などを通してでした。企画展で見たことがあるといっても、オーストリアの芸術に触れられる機会はなかなか訪れなかったんですよね。

豊田市美術館さんではグスタフ・クリムトやエゴン・シーレの作品も所蔵されているようです。企画展でもなかなか見ることのできないオーストリアの芸術を、コレクションでいつでも見られるって本当に素晴らしい環境です。豊田市美術館の近くに住んでいる方、近くに旅行で訪れた方、ぜひぜひ足を運んでみてください。

<ココで会える>
1995年に開館し、19世紀後半から現代までの美術、デザインや工芸のコレクションを有する豊田市美術館。良質な企画展と、近現代の豊富なコレクションで多くの美術ファンを魅了している。さらに谷口吉生氏の設計による同館の建築も魅力のひとつとなっている。オスカー・ココシュカ《絵筆を持つ自画像》は現在開催中の企画展「コレクション展 反射と反転」で観ることができる。2023年1月29日まで開催中(同会期にて「ゲルハルト・リヒター」展も開催)。
豊田市美術館公式サイト

和田彩花
和田彩花1994年8月1日生まれ、群馬県出身。アイドル。2009年4月アイドルグループ「スマイレージ」(後に「アンジュルム」に改名)の初期メンバーに選出。リーダーに就任。2010年5月「夢見る15歳」でメジャーデビューを果たし、同年「第52回日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2019年6月18日をもって、アンジュルム、およびHello! Projectを卒業。アイドル活動を続ける傍ら、大学院でも学んだ美術に強い関心を寄せる。
初のソロアルバム「私的礼讃」が好評配信中!

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