【第6回】「ハカセとNARIのときめくアート」 唯一無二の野外博物館「博物館 明治村」(愛知県)で明治時代にタイムトリップ!

関西在住のマンガ家NARIさんが西日本を中心に美術館や展覧会を訪れるマンガ「ハカセとNARIのときめくアート」。6回目の今回は、不破の関を越えて東日本へ!愛知県犬山市にある野外博物館「博物館 明治村」をレポートします。

ライトの帝国ホテルから明治の監獄や銭湯まで

「博物館 明治村」は昭和40年(1965年)に建築家・谷口吉郎と元名古屋鉄道株式会社会長の土川元夫の二人が、震災や戦災、そして戦後の高度成長期によって取り壊されていく明治時代の文化財を惜しみ、その保存を計るため創設しました。

広大な敷地内に60以上の建造物が展示されていますが、うち11件の建物と3つの歴史資料が国の重要文化財に指定されています。その他の建造物は国の登録有形文化財(1件は愛知県有形文化財)に登録されているなど見どころ満載で、とても一日では回り切れないほどです。実際、ハカセとNARIは朝一番で入村したものの、後半はかなり駆け足になってしまいました。


旧帝国ホテルは、大正12年(1923年)に東京の日比谷公園に面した場所に建設され、昭和42年(1967年)まで営業を続けました。
設計は20世紀を代表する建築家のフランク・ロイド・ライト。経営陣と予算面などですれ違い、建築途中にもかかわらず解任され、アメリカに帰国することになりました。その後は弟子の遠藤新が引き継いでいます。とはいえ、ライトがデザインした個性あふれる建築空間は唯一無二のものであり、今も明治村で輝きを放っています。

「聖ザビエル天主堂」は、京都の河原町三条にあったカトリックの教会堂で、明治23年(1890年)の建設です。ゴシック様式で作られた建物はケヤキ材が使われています。
また、太陽に照らされたステンドグラスが、美しい光の模様を教会堂の内部に描きだします。ステンドグラスをより楽しむには、午前中がオススメです。

「金沢監獄中央看守所・監房」は、石川県金沢市に明治40年(1907年)に建設されました。元は八角形の看守所を中心に5つの監房棟が放射状に並んだ建築ですが、うち中央看守所と監房の一部が移築されています。監視室は網走監獄で使用されたものだそうです。
狭い監房の中に入ってみて、金沢の冬の寒さを想像すると、牢獄での生活はかなり過酷なものだったことが実感できます。

「半田東湯」は、愛知県半田市の知多半島の港町にあったお風呂屋です。明治の末頃に建てられました。実際に浴槽の中にも入ることができますよ。(お湯はありません)

鉄道開業150年 走る蒸気機関車に乗れる感動

2022年は日本に鉄道が開業して150年の記念すべき年ですが、明治期に製造された動く2台の蒸気機関車(12号、9号)を保存しています。12号はその新橋・横浜間を走っていた蒸気機関車なのだとか。(現在12号車の営業運転は見合わせ中で9号車のみの運行)
木造の客車も明治期に製造されたもので、3両編成の客車のうち中央の車両が最も古く、明治41年(1908年)製。実際に乗ってみると、線路の音、客車の軋む音なども含めて明治の鉄道の雰囲気を堪能できます。

「鉄道局新橋工場」は明治22年(1889年)に建てられたもの。建物自体も貴重なものですが、工場内部には、明治35年(1902年)製造の5号御料車、明治43年(1910年)製造の6号御料車が展示されています。
特に明治天皇用として製造された6号車は、歴代の御料車の中でも最も優雅な車両と言われ、その内部の装飾の美しさから「走る宮殿」との異名があるのだとか。納得の美しさを持つ車両です。

「森鷗外・夏目漱石住宅」は、鷗外が明治23年から約1年半、漱石は明治36年から約3年住んだ家です。漱石はこの家に住んでいた頃、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の後任として東京帝国大学英文科講師となり、『吾輩は猫である』『坊っちゃん』などを執筆しました。作家「夏目漱石」が誕生した家なので、漱石ファンならずとも感激間違いなしですね!

(アート探訪インスタグラマー、マンガ家・NARI)

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◇「博物館 明治村」(愛知県犬山市字内山1番地)の入村料は大人2,000円(入村チケット+のりもの一日券3,300円)など。詳しくは「博物館 明治村」公式サイトへ。

森鷗外も少し登場する前回記事はこちら