【和田彩花のカイエ・ド・あーと】第19回 ピエール・ボナール《子供と猫》

ピエール・ボナール《子供と猫》
オルセー美術館に定期的に通える場所にいて思うのは、あれ?日本で見たことある?と思う作品にしばしば出会うことです。
とくに、ナビ派の展示スペースにいくと、日本で見たナビ派の展示を思い出させられるほどです。他国の状況はわかりませんが、展示のために遥々フランスから日本まで作品が運ばれてくるって本当にすごいことだと改めて感じたりしています。
個人的にやたら親しみを感じながらオルセー美術館のナビ派の展示スペースに行くのですが、いつ見てもナビ派の作品に心躍ります。
オルセー美術館のナビ派の手のひらサイズの作品たちが、壁に上下二枚ずつ展示されているスペースが大好きです(時期によって変わるかも?)。小さな画面なのにドレスの模様一つに惹かれたり、目をひく色が大胆に使われていたりして、本当に素敵なんですよね。
こちらに来てから、ナビ派との距離がグッと近くなった気がして嬉しいので、今回は愛知県美術館に所蔵されているピエール・ボナールの《子供と猫》という作品についてお話してみようと思います。
ピエール・ボナール《子供と猫》 1906年頃 愛知県美術館蔵
ボナールは、縦長の画面に人物がくねるようにして描かれている初期の作品の印象が強く、絵画の構図とか奥行きに関してはあまりしっかり描き込まないイメージを持っていました。
本作ではカンヴァスをはみ出ていくテーブル、果物、壺によって大胆な構図が用いられていますが、テーブルと壁紙の平行線や背景の家具の垂直に伸びていく線などによってバランスが取られていることもわかります。
再び初期の作品のイメージを引きずってしまいますが、ボナールといえば画中の人物のドレスの水玉やシャツの格子柄などから装飾的な画面だと感じることも多かったです。
《子供と猫》ではそのような装飾的なモチーフは見受けられず、何層にも色を重ねさせたような絵の具が印象的です。テーブル、猫、少女のシャツの白の中に様々な色が透けて見えてきそう。そんな絵の具の層の上に時々細かな筆使いが置かれていて、思っている以上に時期によって画風が変化していくことと、微妙なバランスを保ちながら絵を描いていける人でもあることを感じられました。
それから、ボナールの作品に登場してくる人物たちの見られることを意識していないような姿も好きです。
多くの場合、絵画の登場人物たちは状況の説明やその人物の特徴などを示すことが多いですし、どうぞ見てくださいと言わんばかりの立ち振る舞いで描かれていることもあります。そうではない人物の描き方をする画家はたくさんいますが、個人的にボナール作品の登場人物たちとの距離感がお気に入りだったりします。
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愛知県美術館は、都市型の複合的な文化施設である愛知芸術文化センターの中の美術館として、1992年に開館。幅の広いジャンルと時代にまたがる魅力的なコレクションを誇る。10月10日まで開催していた国際芸術祭「あいち2022」のメイン会場など、愛知の芸術の中心拠点として、国内外の美術・文化をつなぐ場としての活動も展開。10月29日から「ジブリパーク開園記念 ジブリパークとジブリ展」が開催される。
美術館公式サイト
和田彩花1994年8月1日生まれ、群馬県出身。アイドル。2009年4月アイドルグループ「スマイレージ」(後に「アンジュルム」に改名)の初期メンバーに選出。リーダーに就任。2010年5月「夢見る15歳」でメジャーデビューを果たし、同年「第52回日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2019年6月18日をもって、アンジュルム、およびHello! Projectを卒業。アイドル活動を続ける傍ら、大学院でも学んだ美術に強い関心を寄せる。
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