【和田彩花のカイエ・ド・あーと】第17回 マリー・ローランサンの個性

マリー・ローランサンの個性

マリー・ローランサンは、何十年か前に日本で人気の作家だったと聞いたことがあります。もちろん、今でもローランサンの作品が好きな方はたくさんいっらっしゃると思うのですが、28歳の私からすると何十年か前のブームはほとんど知りません。

10代の頃から西洋美術を追っていた私ですが、ローランサンを認識したのは、大学院の授業だったと思います。なんとなく目にしたことのあるこの作品は、マリー・ローランサンという作家だったのかというようなことを思いました。

ローランサンと同じくエコール・ド・パリという運動で活躍したユトリロについては、10代の頃から認識していたにも関わらず、なぜローランサンを知る機会がなかったのだろうという疑問から、少しづつ興味を持ち始めました。

一見すると少女趣味的に見えなくもない世界観が自分の興味関心の範囲ではなかったという話でもあるのかもしれませんが、実際に作品を見る機会もなかなか訪れなかった気がしています。

今回は、ひろしま美術館所蔵の《花束を持つ婦人》を通してローランサンについてお話しを進めていきたいと思います。

マリー・ローランサン《花束を持つ婦人》
マリー・ローランサン《花束を持つ婦人》
1942年頃 ひろしま美術館蔵

本作は、ローランサンと聞いて想像する灰色、桃色、水色、黄色の淡い色彩で、真っ白な肌をもち、大きな黒目で画面の外側を見つめるような人物像とは少し異なるかもしれません。

ローランサンの画業後半に当たる1942年頃の作品です。

今回の記事をきっかけにローランサンの作品について探ってみたところ、ローランサンと聞けば思い出される作品のイメージはすぐに浮かぶものの、年代によってこんなにも描き方が変わるのかと驚きました。

初期の作品では、しっかりと輪郭線を取りながら色を面として用いたり、キュビスムを吸収した痕跡が指摘されていたりします。1920年代の作品では、輪郭線が消え、色面がモチーフを形作っていくようでした。また、淡い色彩のなかには微妙な色調の変化も見受けられるようになりました。人物像は、黒目が大きくなり、画中の人物の視線は、より不明瞭なものとなっていきました。

このような点を踏まえながら本作と向き合ってみると、1942年頃に制作された《花束を持つ婦人》においても技法の変化が伺えそうです。

引き続き色面がモチーフを形作ったり、微妙な色調の変化が青色のドレスや緑色の背景に用いられる一方で、女性の髪や手に持った花束の色彩は、これまでよりも細かく大胆な筆使いとなっています。

顔の造形は視点を崩すことなく、色調の変化で立体感を描き出します。

花束を持ち、二連の首飾りをつけ、青色のドレスを纏う婦人は、華やかな装いのように感じますが、視線を下へ向けており、特別な感情は見えてきません。

小さな変化を重ねるローランサンの作品を見ていると、ローランサンらしさが何であるかを考えるのは簡単なことではないと感じます。ですが、見ただけでローランサンの作品だとわかる個性を持っているので、今の時代により愛されると嬉しいななんて思いました。

<ココで会える>
ひろしま美術館は、1978年開館。印象派を中心としたフランス近代絵画と、日本洋画や日本画などの日本近代絵画がコレクションの核となっており、なかでもフランス近代絵画は時代別に著名な画家たちの秀作が多く所蔵されている。常設展示では常時90点前後の作品を紹介しており、ローランサン《花束を持つ婦人》も展示中。現在開催中の企画展「THE 新版画 版元・渡邊庄三郎の挑戦」は8月28日まで。
美術館公式サイト

和田彩花
和田彩花1994年8月1日生まれ、群馬県出身。アイドル。2009年4月アイドルグループ「スマイレージ」(後に「アンジュルム」に改名)の初期メンバーに選出。リーダーに就任。2010年5月「夢見る15歳」でメジャーデビューを果たし、同年「第52回日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2019年6月18日をもって、アンジュルム、およびHello! Projectを卒業。アイドル活動を続ける傍ら、大学院でも学んだ美術に強い関心を寄せる。
初のソロアルバム「私的礼讃」が好評配信中!

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