アートで旅する北信濃 新オープンの長野県立美術館、水野美術館の長野市と北斎の聖地・小布施のアートスポットを巡りました!

2022年、長野県の善光寺で行われた「善光寺前立本尊御開帳」。
御開帳とは、数え年で7年に一度、絶対秘仏である御本尊「一光三尊阿弥陀如来」の御身代わりとして、同じ姿をした「前立本尊」を公開する盛儀(華やかでりっぱな儀式)です。

前立本尊の右手には金色の糸が結ばれており、金糸はその後、五色の糸となって伸びていきます。御開帳ではこの糸がさらに白い糸となって伸び、回向えこう柱に結ばれ、柱に触れることによって前立本尊とつながり功徳を得ることができます。

善光寺

前述の通り御開帳は7年に一度ですが、感染症予防のため1年延期され、2022年に開催。また、通常前立本尊の公開期間は57日間ですが、感染症対策を鑑みた分散参拝を行い、今年は88日間(4月3日から629日まで)に延長されました。

長野県立美術館

その善光寺に隣接するのが長野県立美術館です。

20214月に新築オープンしたこちらの施設は、敷地内に本館と東山魁夷館の2つの美術館を擁しています。長野県立美術館は、前身となる長野県信濃美術館のコレクションを引き継いでおり、長野県ゆかりの作家を中心に積極的な収集を行っています。

長野県立美術館

充実の展示内容に加え、建物としての素晴らしさにも注目です。眼前に善光寺と信州の山々が広がる[風テラス]をはじめ、「こんな美術館が近くにあったらいいのに」と思うような魅力が満載。

善光寺参りのついでではなく、しっかり時間を取って訪れたい美術館です。

長野県立美術館:長野県長野市箱清水1-4-4
電話 050-5542-8600(ハローダイヤル)
https://nagano.art.museum/

信濃を代表する日本画専門の「水野美術館」

 

水野美術館

長野市内には日本画を専門とする「水野美術館」があります。

水野美術館は「おいしいきのこはホクト」でおなじみのホクト株式会社が運営する、信濃を代表する美術館のひとつ。

創設者である水野正幸氏が、仕事の合間にあちこちの美術館を巡り歩くうち「この素晴らしさを多くの方々と共有できないものだろうか……」という思いを抱き、そこから丁寧に収集を重ね、近代日本画の巨匠・橋本雅邦や横山大観、菱田春草をはじめとするおよそ500点もの優品でコレクションを築き上げました。

前庭となる本格的な日本庭園

充実したコレクションもさることながら、蔵をイメージした外観に、凛としたエントランス、加えて四季を楽しめる700坪の日本庭園は実に見事。コレクション展と特別企画展を織り交ぜた年間6回編まれる展覧会も魅力的で、何度でも足を運びたくなる美術館です。

水野美術館:長野県長野市若里6丁目2-20
電話 026-229-6333
 https://mizuno-museum.jp/

江戸時代の商家を今に伝える「門前商家ちょっ蔵おいらい館」

おいらい館

善光寺へ向かう中央通りを、大門交差点で右に曲がったところにあるのが「門前商家ちょっ蔵おいらい館」。善光寺門前町の代表的な幕末期の商家を今に伝えるこの施設は、2006年に国登録文化財(建造物)として登録された貴重な建物です。

おいらい館

もとは「油問屋三河屋庄左衛門商店」という、江戸時代中期頃から菜種油(水油)や蝋燭などを扱っていた商家。現在は母屋と土蔵3棟のうち2棟が公開されており、当時の防火設備であった漆喰の壁や、4重になっている蔵の扉の造りも間近で見ることができます。

ちなみに入館料は無料。歴史あふれる重厚な門前商家を楽しみましょう。

門前商家ちょっ蔵おいらい館:長野県長野市長野165-3
電話 026-235-0100
https://www.city.nagano.nagano.jp/museum/oirai/index.html

わざわざ立ち寄ってでも食べたい! 絶品おやきの「西澤餅屋」

長野と言えば蕎麦に林檎、栗など名物がたくさんあります。そのひとつが「おやき」。おやきは信州の食の文化財にも指定されているため、多くの名店がありますが、中でも創業してから90年以上続く「西澤餅屋」のおやきは絶品です。

西澤餅屋

長野市内に本店がありますが、駅ビル(MIDORI)にも店舗が入っているので、帰りがけに購入することも可能。種類も豊富で値段もお手頃、おやきと一緒に販売されているお団子もおすすめです。ぜひ一度ご賞味あれ。

西澤餅屋(本店):長野県長野市大字南長野南石堂町1261
電話 026-226-5295
http://www.oyaki-2438.com/

小布施(おぶせ)

小布施駅

長野駅より長野電鉄で約30分、花と栗で知られる小布施おぶせ。ここ小布施にゆかりがあるのが、あの葛飾北斎です。

北斎は晩年4度も小布施を訪れ、この地にいくつもの作品を残しています。北斎と小布施を繋ぐのが、地元の豪農商であった髙井鴻山の存在。書画に親しみ、商人というよりも文化人としての気質のあった鴻山は、北斎を小布施へ招き、制作のための支援を惜しみませんでした。

ここでしか見ることのできない 北斎の活躍を堪能する「北斎館」

北斎館

北斎が小布施に残した作品の散逸を防ぎ、保存と公開の役割を担っているのが「北斎館」です。

北斎館の特徴は、なんといっても北斎最晩年の傑作《富士越龍》をはじめ、多数の肉筆画を所蔵していること。中でも2基の祭屋台の天井を飾る「男浪」と「女浪」、「龍」と「鳳凰」は迫力の逸品です。80代半ばにして衰えを見せない筆致もさることながら、北斎がこの地に渾身の作品を残そうとした様子がうかがえます。

手前:東町祭屋台 奥:上町祭屋台

大規模展では触れることのできない、小布施での細かな足跡。絵師の愛した風景と共に、北斎館で名品の数々を存分に味わいましょう。

北斎館:長野県上高井郡小布施町小布施485
電話 026-247-5206
 https://hokusai-kan.com/ 

北斎に絵を学び、北斎を支援し自身も書画をたしなんだ豪農商 「髙井鴻山記念館」

髙井鴻山記念館

北斎館から少し歩くと見えてくるのが「髙井鴻山記念館」です。
もとは髙井家のあった場所で、現在は蔵や倉庫、書斎、庭園が公開されています。
北斎を「先生」と呼び、北斎からは「旦那様」と呼ばれていた鴻山は、自らも書画に通じており、ここでは鴻山自身による作品も見ることができます。

髙井鴻山

鴻山が小布施に文人墨客を招いた際に使われた「翛然楼ゆうぜんろう」の中には、実際に入ることが可能。書斎兼サロンの役割を果たしたこの建物は、当時の面影を色濃く残す2階建ての京風木造建築です。北斎も同じ窓から外を眺めたと思うと、感慨深くなりますね。

激動の幕末期に国利民福の精神をもって学問の普及に努め、文化と郷土を愛した鴻山。北斎館とセットで訪れたい場所です。

髙井鴻山記念館:長野県上高井郡小布施町大字小布施805番地1
電話 026-247-4049
https://www.town.obuse.nagano.jp/site/takaikouzan/

やっぱり食べたい 小布施のモンブラン

栗の間伐材がブロック状に敷かれた「栗の小径」は、小布施ならでは

小布施と聞いて栗を連想する方も多いのではないでしょうか。小布施が栗の名産地になった起源については諸説ありますが、江戸時代には厳しい管理のもと、将軍家へ栗を献上していたと言われています。

evolveのモンブラン「朱雀Monte Bianco」

さて、栗と言えばモンブラン。小布施には様々なモンブランの名店があります。

こちらは「evolve」の人気メニュー、「朱雀Monte Bianco」。カシスと季節のソースとともにいただく、大人の味わいです。添えらたシロップ(栗の渋皮を煮出したソースに、栗餡を加えたもの)をかけると、風味に一層深みが出るのもポイント。

休日や行楽期は、どこも満席……ということもあるため、お目当てのお店が決まっている場合は、予約が可能かあらかじめ問い合わせることをおすすめします。

evolve : 上高井郡小布施町小布施500
電話 026-247-1113
 https://obuse-evolve.jp/

四季を楽しむ 自転車でめぐる小布施

小布施にはいくつかのレンタサイクルが用意されています。週末や行楽期にはシャトルバスも運行していますが、ここは小回りの利く自転車を推したいところ。

浄光寺

北斎館などがある中心地から、東に約2キロ走ったところにある浄光寺。特徴的な茅葺屋根を持つ薬師堂は、2022年現在、建立満614年を迎えた国の重要文化財です。

本尊は薬師如来で、「人々の病気をなおし、寿命を延ばす」ご利益があるそう。また、縁結びのお寺としても知られています。長い参道は一瞬上るのを躊躇いますが、木々から吹き抜ける風は涼しく、爽やかな気持ちになれます。 

浄光寺:長野県上高井郡小布施町雁田676
電話 026-247-3924
https://www.jyokoji.jp/

岩松院

浄光寺から北に700メートルほど行くと見えてくるのが「岩松院」です。

不琢玄珪禅師によって1472年に開かれたこちらには、葛飾北斎の天井画《八方睨み鳳凰図》がおさめられています。描かれたのは北斎88歳から89歳にかけて。翌年亡くなっているため、北斎最晩年の大作になります。

今にも近づいてきそうな迫力、そして顔料の鮮やかさに目を見張りますが、なんと描かれた当初から一度も修復は行われていないそう。そのほか、小林一茶の名句「やせ蛙 負けるな一茶 是にあり」の直筆句碑や、福島正則の霊廟など、見どころの多い寺院です。

岩松院:長野県上高井郡小布施町雁田615
電話 026-247-5504
https://www.gansho-in.or.jp/ 

ほかにも小布施には「おぶせミュージアム・中島千波館」や「小さな栗の木美術館」などの美術館が。東京から約1時間半でアクセスできる北信州は、実にアートスポットが充実した場所だということがわかります。

夏は避暑を兼ねて、また紅葉が美しい秋には山歩きとあわせて、これからの季節を十分に楽しめる長野。都会の喧騒を避けて、のんびりアート巡りをしてみませんか?
(ライター・虹)

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