【和田彩花のカイエ・ド・あーと】第14回 ウジェーヌ・カリエール

ウジェーヌ・カリエール

先々月、フランスのリヨン美術館のコレクションを見ていたとき、近代絵画の展示の中に、少し雰囲気の変わった作品を発見しました。

それは、ウジェーヌ・カリエールという画家の作品でした。

同時期に活躍した印象主義の画家たちの明るい色彩表現と自由な筆使いに対し、カリエール作品は画面全体に茶褐色が用いられているのみでした。それから、全体に霧がかかったような表現にぼんやりとした印象を持ちましたが、画面中央にはっきりと繊細な人の姿が見えてくることに驚きました。

コレクションの展示は、年代や芸術運動の流れがわかるような形で構成されていることが多いため、とくにカリエールのような作風では、周囲に展示されている画家との違いが興味深く感じられます。

そんなカリエールの作品について記事を書いてみたいなと思い、日本で見ることのできるカリエールの作品を探してみました。(せっかく記事になるので、なるべく日本各地の美術館を紹介したい!というちょっとしたこだわりも持ちながら探しました。)

今回は、茨城県近代美術館に所蔵されているウジェーヌ・カリエールの《「習作」または「絵画」》を紹介したいと思います。

カリエール,ウジェーヌ《「習作」または「絵画」》
ウジェーヌ・カリエール《「習作」または「絵画」》
1899年 油彩、カンヴァス
茨城県近代美術館蔵(志村巌氏寄贈)

《「習作」または「絵画」》では、首元に手を置き疲労感を見せる人物と、パレットを持つ人物が描かれています。向かって右のパレットを持つ人物は、向かって左の人物を労わり、慰めているようにも見えます。「習作」または「絵画」の寓意でしょうか。

カリエールの作品は色数が少なく、未完成を思わせるような表現だと感じる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、カリエールの描く人物を目の前にすると、色数の少なさや周囲の描き込み具合などを忘れ、人物表現に見入ってしまいます。

これまで、同時期に活躍した印象主義の画家たちの色鮮やかな作品を見る機会が多かったので、この時期になぜ内面を見つめようとし、なぜこのような表現手法に至ったのかを知る必要があるななんて思っています。

美術館では、大型の特別展がどうしても話題になりがちですが、コレクションの展示は、思わぬ出会いや発見で溢れています。事前に見たいものを決めていなくても、幅広い時代、地域の芸術が見られるコレクション展もぜひ楽しんでみてくださいね。

<ココで会える>
茨城県近代美術館は、明治時代以降の日本美術を中心に、約4,000点の美術作品を収蔵。コレクションの核は、近代の日本美術の展開に大きな役割を果たした茨城ゆかりの作家たちの作品。さらに日本の多くの画家たちに大きな影響を与えた印象派など、ヨーロッパの美術作品も収集している。地元作家を中心とした日本の近代美術と、西洋の美術を同時に鑑賞できるコレクション展も魅力のひとつ。ウジェーヌ・カリエール《「習作」または「絵画」》は6月24日から開催する所蔵作品展「日本の近代美術と茨城の作家たち 夏」で展示予定(9月19日まで)。
美術館公式サイト

和田彩花
和田彩花1994年8月1日生まれ、群馬県出身。アイドル。2009年4月アイドルグループ「スマイレージ」(後に「アンジュルム」に改名)の初期メンバーに選出。リーダーに就任。2010年5月「夢見る15歳」でメジャーデビューを果たし、同年「第52回日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2019年6月18日をもって、アンジュルム、およびHello! Projectを卒業。アイドル活動を続ける傍ら、大学院でも学んだ美術に強い関心を寄せる。
初のソロアルバム「私的礼讃」が好評配信中!

公式サイト
公式Twitter
公式Instagram


連載の一覧はこちら

新着情報をもっと見る