【和田彩花のカイエ・ド・あーと】第13回 ミロ《シウラナ村》

ミロ《シウラナ村》

去年気になった画家の一人にジュアン・ミロがいます。

なぜ去年なのかというと、これまで不可思議なイメージにあまり関心を持ってこなかったのですが、年齢と経験を重ねることで気になるものに少し変化が出たというようなことなのだと思います。自分好みの作品はもちろんありますが、好み関係なく開催されている展示を見ていくのが好きなので、そんな生活の中でミロの作品に出会いました。

ミロの作品を見てまず思ったのは、何も考えずに見てるだけでいい時間になってしまう作品だなということです。個人的なことになりますが、最近まで美術史を学ぶ学生だったこともあり、作品の前でいつも何かを考えるようになっていました。自分にとってはそれも好きなことの一つでしたが、何かしらのヒントを絵から掴まなければなんてどこかで追われていたのかもしれません。学生生活も終わり、自分の人生が一つステップアップしてようやく、見ているだけの時間を愛せるようになりました。

この春、東京、そして愛知で「ミロ展―日本を夢みて」が開催されています。今回は、こちらの展示に出品されている《シウラナ村》についてお話をしてみようと思います。

ジュアン・ミロ 《シウラナ村》
ジュアン・ミロ 《シウラナ村》 1917年
油彩、キャンバス 吉野石膏コレクション(山形美術館寄託)
©Successió Miró/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 E4304

先ほど、見ているだけでいい時間を過ごせると言いましたが、こちらの作品は、ミロらしいミロの作品というわけではありません。

1917年、ミロが24歳のときに描いた初期の作品です。

不可思議なイメージを多く描く印象のミロが、実景を描いています。第一印象では、モチーフの輪郭線をしっかりと取りながら、筆跡の向きを揃え、ときどき色の面が見えてくるセザンヌの描写を想像させられました。画家の皆さんは、初期の頃に先人たちの作品を模写していくところから我が道を追求されることが多いですが、ミロがセザンヌに近い描写を用いていたことが興味深かったです。

先人たちの作品を下敷きにしているとはいえ、画面左手前にレインボーカラーを思わせるような色彩が帯状に置かれています。風景を題材にしながらも、現実のイメージや色から離れたこの色合いに、後のミロらしいミロの作品を想像させられます。表現の歩みを感じられる作品には愛すべき箇所がたくさん詰まっていて好きです。

ミロの作品が一堂に会する展覧会では、ぜひ画業の歩みや今回の展示テーマになっている日本という視点からも、ミロの作品を楽しんでみてくださいね。

<ココで会える>
スペインのバルセロナで生まれた大芸術家、ジュアン・ミロ(1893~1983)。ピカソと並ぶ現代スペインの巨匠として日本でも広くその名は知られている。本展では、若き日の日本への憧れを象徴する初期作品から代表作、そして日本で初めて展示されたミロ作品を通し、相思相愛であったこの画家と日本の関係に迫るもの。国内では20年ぶり、待望の大規模ミロ回顧展となる。Bunkamuraザ・ミュージアム(東京)は4月17日まで。4月29日~7月3日は愛知県美術館で開催。
展覧会公式サイト

和田彩花
和田彩花1994年8月1日生まれ、群馬県出身。アイドル。2009年4月アイドルグループ「スマイレージ」(後に「アンジュルム」に改名)の初期メンバーに選出。リーダーに就任。2010年5月「夢見る15歳」でメジャーデビューを果たし、同年「第52回日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2019年6月18日をもって、アンジュルム、およびHello! Projectを卒業。アイドル活動を続ける傍ら、大学院でも学んだ美術に強い関心を寄せる。
初のソロアルバム「私的礼讃」が好評配信中!

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