【和田彩花のカイエ・ド・あーと】第10回 原美術館コレクション:やなぎみわ「フェアリーテール」

原美術館コレクション:やなぎみわ「フェアリーテール」

2021年1月に東京品川区で活動を終了された「原美術館」が、群馬県渋川市にあった別館「ハラ ミュージアム アーク」と統合され、2021年4月に群馬県渋川市で「原美術館ARC」としてリニューアルオープンされました。

群馬県出身の私は、2022年最初に訪れる美術館は、原美術館ARCにしようといつからか意気込んでおり、年明けてすぐに家族で美術館に行ってきました。

品川の原美術館に遊びに行っていたときは企画展を見ることが多かったので、今回開催されていた「虹をかける:原美術館 / 原六郎コレクション」展で、おそらく初めて原美術館のコレクションとじっくり向き合う機会となりました。

美術館周辺には、伊香保温泉や水沢観音、水沢うどんなど群馬の名物があり、美術館隣にはグリーン牧場があるような自然豊かな場所で、現代美術を堪能しました。自然のなかに設置された屋外展示や、美術館から覗ける群馬の山々などお伝えしたいことは様々あるのですが、早速作品のお話に入りましょう。

今回は、原美術館のコレクションからやなぎみわさんの「フェアリーテール」シリーズ《無題Ⅳ》のお話をしていきたいと思います。

やなぎみわ「無題Ⅳ」ゼラチンシルバープリント 2005年 140×100㎝ 🄫Miwa Yanagi 公益財団法人アルカンシエール美術財団/原美術館コレクション 
やなぎみわ「無題Ⅳ」
ゼラチンシルバープリント 2005年 140×100㎝ 🄫Miwa Yanagi
公益財団法人アルカンシエール美術財団/原美術館コレクション

やなぎみわさんの作品との出会いは、大学学部時代に履修した「美術と社会」というテーマの授業だったと記憶しています。とくに、(女性)作家やジェンダーについて深掘りしていく回だったと思います。当時は、まだジェンダーという言葉を理解することでいっぱいでしたが、そのうちジェンダーは私の人生にあって当然のものになっていきました。

そんな出会いから、歳と経験を少し重ねて、ようやくフェアリーテイルと対面できるようになれた気がしています。

テントのようなものを頭からかぶった人物が、子供をテントの中に引き入れようとする場面。テントの中から子供をしっかりと捉える手には皺が刻まれ、歳老いた人物を思わせます。モノクロの画面では、皺の刻まれた手は印象的で、突然得体のわからないものを見たときの、ぎょっとするような感覚を持ちました。そんなとき、このフェアリーテイルシリーズが投げかける、老いと若さにまつわる従来的な性役割と表象について、この世界で生きてきた肌感覚で何を得体のわからないようだとしてしまうのかを自覚させられました。

それから、やなぎみわさんの物語性あるテーマと壮観な場面設定、感情の発露を比較的容易に画面から受け取ることのできる作家性である印象は変わりませんでしたが、画面から時間を感じとるのは難しいと感じました。

日常の一瞬、このとき、そのとき、あるときではない時間です。老いと若さの時間、人物の動きにまつわる時間、背景の大地の時間、画面の登場人物に扮する生身の人間の時間など、画面にはいくつもの時間軸が存在していて、表現の厚さを感じる機会になりました。

いつか、自分の肌に皺が刻まれるようになったときにも、フェアリーテールと向き合う時間があればいいなと思っています。

<ココで会える>
東京都品川区に「原美術館」、群馬県渋川市に別館「ハラ ミュージアム アーク」、この2館を舞台に、現代美術を通じた国際交流の推進と現代美術の活性化を軸に、アーティストとともに多彩な活動を展開してきた公益財団法人アルカンシエール美術財団。2021年1月に東京での活動を終え、原美術館とハラ ミュージアム アークを統合、ハラ ミュージアム アークを改称し、2021年4月、群馬県渋川市にて「原美術館ARC」としてリニューアルオープンした。やなぎみわをはじめ、約1,000点にのぼる国内外の貴重な現代アートコレクションを楽しめるほか、特別展示室「觀海庵」では東洋古美術もあわせて堪能できる。3月18日まで冬季休館中。
原美術館ARC公式サイト

和田彩花
和田彩花1994年8月1日生まれ、群馬県出身。アイドル。2009年4月アイドルグループ「スマイレージ」(後に「アンジュルム」に改名)の初期メンバーに選出。リーダーに就任。2010年5月「夢見る15歳」でメジャーデビューを果たし、同年「第52回日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2019年6月18日をもって、アンジュルム、およびHello! Projectを卒業。アイドル活動を続ける傍ら、大学院でも学んだ美術に強い関心を寄せる。
初のソロアルバム「私的礼讃」が好評配信中!

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