【和田彩花のカイエ・ド・あーと】第6回 この黄色をいつか見たい

この黄色をいつか見たい

コロナ禍で何が悲しいかって、大好きな美術とのコミュニケーションを思うままにでき ないことだと、改めて感じているこの頃です。もちろん、基本的な対策をすれば美術との楽しい時間を過ごせたりもしますが、状況によっては、外に出るのを控えたいと思う自分もいたり……、ときどき外に出かける、そのときどきのタイミングでどの美術館に行こうかを 決めるのはなかなか難しいです。

そんな私は、この連載のテーマにもつながりますが、日本の美術館に所蔵されているコレクション探しに夢中です。思いつくままに美術館をネットで検索して、コレクションの紹介ページを徘徊し、ここにこんな作品があったのか!と新たな発見を楽しむだけなのです……が、美術館の行き方まで調べると、その土地を知るきっかけになったりもして結構楽しいんです。

今回は、岡山県倉敷市にある大原美術館のコレクションから、気になった作品を紹介してみようと思います。

大原美術館には、岡山県にライブで行った際の空き時間を使って足を運んだり、2016年に国立新美術館で開催されていた展覧会「はじまり、美の饗宴展」でも大原美術館のコレクションを観たことがあります。西洋美術好きの自分にとっては、充実したコレクションの数々に感動しっぱなしでしたし、周辺の倉敷美観地区の街並みも含めて素敵だったことをよく覚えています。

そんな大原美術館のコレクションの紹介ページで改めて作品を見ていて印象的だったのが、ジュール・フランドラン《花を持つ少女》という作品です。

ジュール・フランドラン《花を持つ少女》
ジュール・フランドラン《花を持つ少女》 大原美術館所蔵

まず、最初に目を引いたのが華やかな造形です。背景の平坦に塗られた黄色と少女の服の水色の点が画面を彩ります。少女が手に持った花は、流れるような筆使いで描かれ、茎や葉の緑色、花の白色、黄色、赤色の鮮やかな色彩も素敵です。色の面と、素早い筆使いの滑らかさと形、点の短い筆跡など、様々な手法が組み合わせられていますね。

しかし、本作品のメインモチーフの少女を見てみると、伏し目がちといいますか、目をつぶっているようでもあり、口元をキュッと閉じ、喜怒哀楽のどこにも当てはまらない感情から不思議な印象を持ちます。

先ほどお伝えした華やかな造形と少女の表情を照らし合せたときに一番に思い出したのは、ナビ派の装飾性と、神秘的な雰囲気との類似性でした。本作品を制作したジュール・ フランドランさんの情報は少ないですし、本作の制作年代も不明なので、私も確かな情報に十分に辿り着けていませんが、画面をじっくり観察し作品の特徴を見つけていく喜びを一緒に感じてもらえていたら嬉しいです。

それから、あの画家のこの作品が見たいという姿勢を前提にしていたら、出会えなかった作品だったと思います。コロナ禍で行動に不自由がまだまだつきまとう日々ですが、いつも通りではない姿勢で見えてくる新しい発見をこの機会にたくさん拾っておきたいです。

 

<ココで会える>
大原美術館は1930年、日本最初の西洋美術中心の私立美術館として誕生。エル・グレコ、ゴーギャン、モネ、マティスなど、同美術館の中核をなす珠玉の西洋美術コレクションのほか、中国、エジプト美術、日本の近代から現代の美術、民藝運動にかかわった作家たちの仕事といったコレクションで知られる。公式サイトでは、「おうちで楽しむオンラインツアー」や「バーチャル展示室」など、コロナ禍でなかなか足を運べない美術ファンのための、多彩なコンテンツがたくさん用意されている。
大原念美術館 公式サイト

和田彩花
和田彩花1994年8月1日生まれ、群馬県出身。アイドル。2009年4月アイドルグループ「スマイレージ」(後に「アンジュルム」に改名)の初期メンバーに選出。リーダーに就任。2010年5月「夢見る15歳」でメジャーデビューを果たし、同年「第52回日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2019年6月18日をもって、アンジュルム、およびHello! Projectを卒業。アイドル活動を続ける傍ら、大学院でも学んだ美術に強い関心を寄せる。

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