【和田彩花のカイエ・ド・あーと】第5回 ロスコ・ルームの赤

ロスコ・ルームの赤

本連載、ここまで西洋の近代絵画を見てきましたが、ここで突然のロスコ・ルームです。

今回、なぜロスコ・ルームなのかといいますと、そもそも本物の作品を見てからでないとコラムを書き出しにくい自分だったりするのですが、外出を控えている今、取り上げられそうな作品がなかなか思い浮かばない状況もありまして、それならば去年、DIC川村記念美術館で鑑賞して以来、今でも頭から離れないロスコ・ルームについて書いてみようと思った次第です。

みなさんは、抽象画にどんなイメージを持っていますか? 私は、抽象画に対して、精神的世界を表しているという勝手なイメージが先行しており、その精神性がなんのことだか自分にはさっぱりわからないし、感じることも難しいと思っていました。ですが、大好きなマネを通して近代以降の絵画の見方も少しつづ獲得していったこともあって、そのうちなんの抵抗もなく鑑賞することができるようになっていったのがここ数年の出来事だったりします。そんな私の個人史の矢先で出会ったのが、去年の秋に初めてじっくりと対面することになったロスコ・ルームでした。

ロスコ・ルームは名前の通り、ロスコの作品のみ展示された一部屋です。「シーグラム壁画」と呼ばれるシリーズのうちの7点が同館に所蔵されているようです。

まず、展示室に入ってその大きさに圧倒されました。横幅2.5メートルを超える作品が並び、そのうち2点は4.5メートルに及ぶようなので、かなり大型の作品であることを想像していただけますでしょうか。それから、ロスコの絵画が醸す神秘的な空間にも驚きました。

DIC川村記念美術館の「ロスコ・ルーム」
DIC川村記念美術館の「ロスコ・ルーム」
撮影:渡邉修
© 1998 Kate Rothko Prizel & Christopher Rothko
 / ARS, N.Y./ JASPAR, Tokyo E4332

作品群は、深い赤を基調に、四角形が主なモチーフとして描かれています。色彩は、四角形と、下地の2色で構成され、作品ごとに配色は異なり、黒や赤、橙などの色彩が用いられています。四角形の枠組み部分には筆跡が残り、形は曖昧で、ところどころ下地の色彩が混じっているようでした。緩やかに色が繋がっていく様子は、いつまでも見ていられる光景でもありました。

赤色って、華やかさ、情熱や血など幅広くイメージを想起させます。ロスコの赤色は、具体的な感情や物事というよりも、もっと捉え難い静けさと神秘的印象を持ちました。画面上で2色の色彩がゆっくりと混ざっていくかのように、見ている鑑賞者の心にも少しづつ色が滲み、静的な状況を見せてくれるようです。色が人の心に働きかけるパワーを改めて感じたりもしました。

色から何を感じるかは、その時々の状況によって変化するかもしれません。コロナが落ち着いたときには、またDIC川村記念美術館のロスコ・ルームに行って、次はどんな印象を受けるかを楽しみたいです。

 

<ココで会える>
ロスコ・ルームはDIC川村記念美術館(千葉県佐倉市)の常設展示として楽しめる。現在、DIC川村記念美術館では「コレクションViewpoint クリストとジャンヌ゠クロード―包む、覆う、積み上げる」が開催中(10月3日まで)。新型コロナ感染症対策のため、事前予約制。
同館へのアクセスは、東京駅からJR総武快速線エアポート成田で「佐倉駅」(約60分)下車後、南口のDIC川村記念美術館バス停より無料送迎バス(約20分)。さらに東京駅から60分で直行できる高速バス往復便も運行中。詳しくは美術館公式サイトへ。
DIC川村記念美術館 公式サイト

和田彩花
和田彩花1994年8月1日生まれ、群馬県出身。アイドル。2009年4月アイドルグループ「スマイレージ」(後に「アンジュルム」に改名)の初期メンバーに選出。リーダーに就任。2010年5月「夢見る15歳」でメジャーデビューを果たし、同年「第52回日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2019年6月18日をもって、アンジュルム、およびHello! Projectを卒業。アイドル活動を続ける傍ら、大学院でも学んだ美術に強い関心を寄せる。

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