【和田彩花のカイエ・ド・あーと】第2回 クールベの波

クールベの波

パナソニック汐留美術館で開催されている展覧会「クールベと海展 ―フランス近代 自然へのまなざし」に足を運びました。
学生時代、エドゥアール・マネの作品と向き合うにあたって(マネについては前回のコラム「マネとモリゾとアヤチョ」をご覧ください)、たびたびクールベの作品を参照していた私にとっては個人的に思い入れのある画家です。

クールベは、19世紀に興隆した現実社会に取材する芸術という意味での写実主義の画家とされています。あるがままの現実を描き出すという点は、主題の側面から注目されることが多いですが、学生時代の私は描写面からも写実主義に向き合い、美術における近代とは何かを理解しようとしていました。と、そんなこともありましたが、話を続けると個人的な思い出話が長くなってしまいそうなので、とりあえず、作品を見ていきますね。

今回は、クールベの1869年に描かれた《波》についてです。タイトルにもあるとおり、画面下半分に大きく波のうねる様子が描かれています。画面上半分の空を見てみると、晴れ間が見えており、荒れた天気ゆえの波立ちを捉えたわけではなさそうです。

ギュスターヴ・クールベ《波》
ギュスターヴ・クールベ《波》
1869年 油彩・カンヴァス 愛媛県美術館蔵

うねる波の高さを見ていくと、水平線を越えるほどの大きさになっています。もし、うねりが小さく描かれていたら、海の広がりや自然の情景などが見えてくるかもしれません。ですが、クールベは、情景ではなく、波そのものを私たちに見せようとしてくるのです。波が壁のように私たちの前に立ちはだかって、それ以外は何も見せないかのように。

また、岩に当たる波しぶきには、白色の絵の具がそのままカンバスに置かれ、波のうねりには深緑色の微妙な色調の変化が見えます。空の晴れ間には黄色や桃色なども用いられ、画面から様々な色使いが見えてきます。

クールベの作品から見えてくる波そのものや様々な色や絵の具そのままの現実を眼差す視点は、それまでの伝統的な西洋美術に見受けられる物語的な語り口に対しての問題提示であると同時に、見えづらくなってしまった現実に焦点を当てていく行為であるように感じます。

この時期の、とくにクールベやマネなどの作品を見ていると、現代の私たちの生活に溢れる彩られたイメージや出来事からこぼれてしまうものがないか……目を向ける必要性に気付かされます。

私は美術が大好きでしかない人間で、芸術家ではないのだけど、必要な視点を彼ら彼女らから学び、日常生活に落とし込むことは誰にでも開かれている眼差しだと思います。

 

<ココで会える>
《波》は愛媛県美術館のコレクション。現在、開催中の展覧会「クールベと海展 ―フランス近代 自然へのまなざし」に展示中。パナソニック汐留美術館にて6月13日まで(現在、緊急事態宣言のため臨時休館中)。フランスのオルレアン美術館が所蔵する《波》も展示、クールベの描いた迫力ある海の作品を堪能できる。
パナソニック汐留美術館公式サイト

和田彩花
和田彩花1994年8月1日生まれ、群馬県出身。アイドル。2009年4月アイドルグループ「スマイレージ」(後に「アンジュルム」に改名)の初期メンバーに選出。リーダーに就任。2010年5月「夢見る15歳」でメジャーデビューを果たし、同年「第52回日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2019年6月18日をもって、アンジュルム、およびHello! Projectを卒業。アイドル活動を続ける傍ら、大学院でも学んだ美術に強い関心を寄せる。

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