【夢眠ナビ】第12回 有限の世界で無限を見せる M.C.エッシャー

有限の世界で無限を見せる M.C.エッシャー
ここ「夢眠ナビ」では、好きな画家をたくさん挙げてきたけれど、
一番好きな画家を聞かれたら、「エッシャー」と答える。
説明しづらいのだけれど、“計算され尽くされた理数系の色気と凄み”に、クラクラしてしまうのだ。
(しかしエッシャーは数学が全くできなかったと自称している……絶対に嘘!)
エッシャーはコンピューターグラフィックスやコンピューターゲームが発明される前に、この世界観を確立した。
あらゆるRPGやファンタジーものダンジョンに影響を与えているんじゃないだろうか。
とにかく淡々とオカシイ。
通常ありえない遠近法が用いられ、紙の上でしか存在できない世界が広がる。
数学者なの? 建築家なの? という作品もたくさん。
これが、ド文系の私がクラクラする理由である。
《でんぐりでんぐり》というでんぐり返しするへんてこな虫や騙し絵が有名だが、風景画も素晴らしい。
一番好きなのは《三つの世界》。
描かれているのは水面のみだが、浮かぶ落ち葉で「物質」、深くにいる魚で「透過」、映り込んだ木々の「反射」を描写することにより「水面」「水中」「陸」を見事に表現している。
マウリッツ・エッシャー《三つの世界》 M.C. Escher's “Three Worlds” © 2021 The M.C. Escher Company-The Netherlands. All rights reserved. www.mcescher.com 協力 ユニフォトプレス
彼を知るきっかけはなんだったか忘れてしまったが、中学生の時にはもうどっぷり好きだった。
そして、中学の修学旅行は長崎。
そこでの一番色濃い記憶が、カステラでもちゃんぽんでもなく、エッシャーだったのだ。
当時は、ハウステンボスにエッシャーの施設「ミステリアスエッシャー」が存在していて、今考えるとすごくアナログだけれどエッシャーの世界観に入り込める仕組みがあって感激したのを覚えている。
Tシャツが欲しかったけど買えなくて、なんかチラチラ絵が変わる栞を買った。
残念ながら、ミステリアスエッシャーはリニューアル後になくなってしまったのだけど、本当に惜しい……。
が、ハウステンボス美術館には多くのエッシャーコレクションがあり、タイミングがあえばエッシャー展をしているのでぜひまだ訪れたい。
ハウステンボスのホテルにエッシャールームがあったら、絶対泊まるのになあ。
どうですか、ハウステンボスさん!
《次回は最終回、2021年3月19日更新になります》
<夢眠メモ>
ハウステンボス美術館・博物館が所蔵するエッシャー・コレクションは世界有数であり、その数は世界3番目といわれる。「パレス ハウステンボス」内にある美術館にて、不定期にコレクションの名品を紹介する展覧会を実施している。5月10日まで「ミレーから印象派への流れ展 ~光が奏でるハーモニー~」が開催中。
ハウステンボス 公式サイト
夢眠ねむ(ユメミ ネム)
書店店主/キャラクタープロデューサー
多摩美術大学卒業
10年間続けたアイドル活動を引退後、本好きのためではなくこれからの本好きを育てる「夢眠書店」を下北沢で開業。書店経営と並行してミントグリーンのたぬき「たぬきゅん」と、その仲間たちのプロデュースを手掛けている。映像監督、作詞、パレード脚本、コラム執筆、キャラクターデザインなど活動は多岐に渡る。