【夢眠ナビ】第11回 生命の力を思い出す 岡本太郎

生命の力を思い出す 岡本太郎

高校3年生の頃。
美大受験のためにデッサンと色彩構成、学科勉強に追われているとき、自分の力に限界を感じて神頼みもしなくてはとすがる気持ちで出向いたのが、「太陽の塔」だった。
万博記念公園駅を降りると、想像よりも大きい。

受験に合格しますように……と手を合わせ、顔を上げると太陽の塔と目があった。
『知ランガナ』えっ?『勝手ニヤレ』……!突き放されてしまった。
う〜ん、まあ貴方も美術の神様として鎮座しているわけじゃないけどさ、ちょっとくらいは受け止めてよと、何度念じても塔から感じるメッセージは同じであった。
そりゃ自分で勝手に頑張るしかないか、と最後はすごく納得したのを覚えている。

その時代に生きていなくても、歴史の一部として知っている「日本万国博覧会(大阪万博)」。
「太陽の塔」は、そのテーマ館の一部として建てられた。
とてつもなくデカくて、一度見たら忘れられない姿。
大阪万博のテーマは「人類の進歩と調和」だったが、太陽の塔にその言葉は感じられない。
これが調和なわけがない。
明らかに、パワー漲る異物である。

岡本太郎《太陽の搭》
太陽の搭 外観
写真提供:大阪府

外見だけでも圧倒されるが、2018年の内部再生事業により一般公開された内部も凄まじい。
髄のようにそびえ立つ《生命の樹》にはアメーバなどの単細胞生物から人間に至るまでの進化の過程が、連なる33種183体の生き物で展開されている。
ガツンと目に飛び込む外壁の赤い色を見ているとドクンと”血が騒ぐ”。
自分がかつて単細胞、動物であったことや、太陽を拝み雨に躍っていた遺伝子を自覚させられる。
荒療治的に、強引に。

岡本太郎《太陽の搭 生命の樹》
太陽の搭(内部) 生命の樹
写真提供:大阪府

なかでも私は、太陽の塔の右腕内部が気に入っている。
同じ赤でもスンと静かに未来的に、宇宙に向かって伸びていて美しい。
大阪万博開催当時はここにエスカレーターが設置されていたらしい。
見ているだけで吸い込まれそうなのに、実際に登って行けるなんて当時ここに並んでいた人々をうらやましく思う。

今まさに、大学受験真っ只中という学生さんもいるでしょう。
なかなかお参りはできない状況もあると思うが、最寄りの岡本太郎作品に参ってみるのもいいかもしれない。
ベタベタ応援されるより、程よく突き放してくれる。
自分の力を使って奮起できる、不思議な力をもらえるかもしれない。

《次回の更新は2021年2月19日になります》

 

<夢眠メモ>
岡本太郎がデザインし、1970年に開催された日本万国博覧会(大阪万博)のシンボルゾーンに、テーマ館の一部として造られた「太陽の塔」。「太陽の塔」は過去・現在・未来を貫いて生成する万物のエネルギーの象徴であると同時に、生命の中心、祭りの中心を示したもので、大阪万博開催期間中、来場者(約6,400万人)に多くの感動を与えた。「太陽の塔 内部再生」事業として、内部に展示されていた「生命の樹」や第4の顔である「地底の太陽」を再生・復元し、平成30年3月に一般公開。太陽の搭オフィシャルサイトより予約優先で内部に入館することができる。
〈利用案内〉営業時間:10:00~17:00(最終受付16:30)
休館日:水曜日(万博記念公園に準ずる)
入館料:大人720円/小中学生310円(前日までの予約が可能 ※予約優先)
※別途、万博記念公園入園料(大人260円/小中学生80円)が必要
太陽の搭 オフィシャルサイト


夢眠ねむ(ユメミ ネム)
書店店主/キャラクタープロデューサー
多摩美術大学卒業
10年間続けたアイドル活動を引退後、本好きのためではなくこれからの本好きを育てる「夢眠書店」を下北沢で開業。書店経営と並行してミントグリーンのたぬき「たぬきゅん」と、その仲間たちのプロデュースを手掛けている。映像監督、作詞、パレード脚本、コラム執筆、キャラクターデザインなど活動は多岐に渡る。

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