探訪③ 板谷波山記念館(茨城県筑西市) 近代陶芸の先駆者が生まれた町

板谷波山作の青磁袴腰香炉(板谷波山記念館で)

鉄道で笠間と益子へ行く時に、乗換駅になるのが茨城県の下館(筑西市)だ。駅前通りを真っ直ぐ10分ほど歩くと板谷波山記念館に着く。日本の近代陶芸の先駆者で、陶芸家として初の文化勲章受章者でもある波山はここで生まれた。「波山」は故郷の山「筑波山」に因む。

正門から入ると右手、生家が目に入る。波山(本名・嘉七)はここで、しょう油醸造や雑貨商を営んでいた板谷家の末子として生まれる。

板谷波山の生家。江戸中期に建てられたという

記念館は波山の業績と人柄を後世に伝えたいと、平成7(1995)年に設立された。生家の隣にある展示館には約30点の波山の作品とともに、素描や下絵、愛用の品、地元の人とやりとりした書簡などが並べられている。東京美術学校(現東京芸術大学)の卒業証書もあり、学長・岡倉天心の本名・覚三の名が書かれている。波山は美術学校では彫刻科に入学するが、石川県工業学校で教えていた時に陶芸の指導を担当することになり、作陶に打ち込むようになる。

展示館には波山の作品とともに地元の人と交わした書簡類も展示されている

故郷の下館とのつながりを大切にし、日中戦争での戦没者遺族に、自ら制作した香炉や観音像を贈った。また、80歳以上の人に自作の鳩杖を自ら手渡したという。館にはその観音像や鋳物と白磁の鳩杖も展示されている。

田端で実際に使っていた窯

展示館の奥の「作業場」には東京・田端の住まいにあった工房を移築。愛用のろくろや石臼、水瓶などの道具が置かれている。また、田端で使った焚口が3か所ある三方焚口倒焔式丸窯と呼ばれる窯もある。波山は作陶に関しては一切の妥協を許さず、焼き上がった作品も気に入らないとすべて叩き割ったと言われる。作業場には割られた陶磁器の破片も置かれている。

真岡鉄道下館駅を土日の午前10時35分発、SLが走る

波山の作品は記念館の近くにある、しもだて美術館(地域交流センター・アルテリオ3階)も約20点を所蔵、常時数点の作品を公開している。また、県内の民間人が収集した44点の作品も遺族から筑西市に寄贈され、保管されている。同館では波山と同じ地元出身の文化勲章受章者である洋画家・森田茂の作品も所蔵、企画展等で展示される。

詳しくは同館ホームページへ。

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