探訪・かさましこ② 益子陶芸美術館 偉大な先人と、自由な空気が生み出す多彩な才能

小滝悦郎《線条文花生》 益子陶芸美術館蔵

日本遺産認定記念 益子を彩る陶芸家たち ~コレクションにみる個人作家の系譜~

益子陶芸美術館(栃木県益子町)

2020年11月17日(火)~2021年2月28日(日)

益子焼は江戸時代末期、笠間で修業した大塚啓三郎が窯を築いたことに始まると言われている。以来、優れた陶土を産出することと、東京に近いことから、鉢や水がめ、土瓶など日用品の産地として発展を遂げた。現在も春と秋には陶器市が開催され、遠隔地からもファンが詰めかける。

1924年に、民芸運動を推進した陶芸家の濱田庄司(1894-1978)がこの地に移住し、柳宗悦らとともに運動を進める傍ら、地元の工人たちにも大きな影響を与え、益子焼は「芸術品」としての側面も持つようになった。現在、窯元は約250、陶器店は50。若手からベテランまで窯を構える陶芸家も多く、その作風は多種多様だ。

陶芸の里らしい外観の益子陶芸美術館(写真提供:益子陶芸美術館)

益子のアートの中核施設、益子陶芸美術館では「かさましこ」の日本遺産認定記念として、益子を拠点に活躍した個人作家を特集する企画展を開催中だ。

作品とじっくり向き合える、落ち着いた雰囲気の展示室(写真提供:益子陶芸美術館)

会場では、濱田庄司と、濱田を師としてその道を発展させた島岡達三(1919-2007)らの作品から、益子の陶文化を説き起こす。

濱田庄司《塩釉色差水指》 益子陶芸美術館蔵
島岡達三《地釉象嵌草花文壺》1996年 益子陶芸美術館蔵

多くの作家は濱田らの作品に惹かれて益子に集い、多種多様な作風を開花させていった。その自由で闊達な作品群には思わず目を奪われる。

木村一郎《辰砂絵角壺》 1977年 益子陶芸美術館蔵
加守田章二《壺》1979年 益子陶芸美術館蔵
小滝悦郎《線条文花生》 益子陶芸美術館蔵
廣崎裕哉《牙白瓷瓶子》 2001年 益子陶芸美術館蔵
長倉翠子《炮》 2006年 益子陶芸美術館蔵
瀬戸 浩《金銀ストライプ壺》1980年 益子陶芸美術館蔵

川北裕子学芸員は「かつて、多くの作家は濱田の存在に憧れて益子を訪れ、その大きな壁にぶつかった。そうした過程を経て器を作る技術を身に着け、独自性を磨いて自分たちの個性を打ち出すようになった。多彩な個性は偉大な先人が生み出した、ともいえる」と語る。一方、益子の良さはアマチュアリズムにもある、という。「益子は敷居が低く、だれでも受け入れてくれる自由な陶芸文化がある。近年はそうした空気の中でユニークな作家が育ちつつある」とも。

コロナ禍で気楽に外部から行き来できる状況とは言えないが、「かさましこ」には大きな可能性が秘められている。今後も注目していきたい。同展について詳しくは同美術館ホームページへ。

探訪③へ続く。

(読売新聞東京本社事業局美術展ナビ編集班 岡部匡志)

 

 

 

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