探訪・かさましこ① 茨城県陶芸美術館 焼き物の町で味わうアート

陶芸家や陶芸ファンに愛される「かさましこ」(写真提供・かさましこ観光協議会)

県境を挟んで近接する茨城県笠間市と栃木県益子町は東日本屈指の窯業の地として知られ、現在も600人を超える陶芸家が活動している。ギャラリーや陶器店を目当てに訪れるファンも多い。もともと古代から同じ文化圏で、江戸時代(18世紀後半)に信楽の陶工の指導で笠間焼が始まり、さらに笠間で修業した陶工が益子に窯を開いて益子焼が生まれた、という兄弟関係にある。

東日本大震災からの復興を契機に、「かさましこ」として県境と越えた取り組みが盛んになり、2020年6月には、文化庁が認定する日本遺産に「かさましこ~兄弟産地が紡ぐ“焼き物語”~」が認定された。「日本遺産」は地域の文化財群を総合的に整備・活用し、国内外に発信することで地域の活性化を図る目的で制定されており、今後、焼き物を通じて一層の発展が期待されている。こうした振興の拠点にもなっている二つの美術館を訪ねた。

(写真提供・かさましこ観光協議会)

人間国宝 松井康成と原清 展

茨城県陶芸美術館(茨城県笠間市)

2020年10月31日(土)~2021年3月21日(日)

重要無形文化財保持者(いわゆる人間国宝)の二人の作家が到達した美の形を掘り下げた企画展。松井康成(1927-2003)は、重要無形文化財「練上手(ねりあげで)」保持者。色違いの粘土を重ねて模様を作る技法だ。長野県に生まれ、笠間市内の寺院の住職となり、お寺の仕事と並行しながら作陶を行い、独自の表現を極めていった。器の表面に生じる亀裂を生かした「嘯裂(しょうれつ)」や「象裂(しょうれつ)」から、表面を研磨することで練上の文様を鮮やかに浮かび上がらせた「玻璃光(はりこう)」などの技法で、特色ある作品がずらり。

松井康成 《練上嘯裂茜手壺(ねりあげしょうれつあかねでつぼ)》1982年 同美術館蔵
松井康成 《練上嘯裂茜手大壺「深山紅」(ねりあげしょうれつあかねでおおつぼ しんざんこう)》1981年 同美術館蔵
制作に取り組む松井康成氏(茨城県陶芸美術館提供)

一方、原清(1936-)は重要無形文化財「鉄釉陶器(てつゆうとうき)」保持者。島根県生まれで、現在は埼玉県寄居町で活動している。重ね掛けした黒釉と褐色釉とをおおらかなフォームにあしらった「鉄釉陶器」を中心に、美しく青みがかった釉調が特色の「鈞窯(きんよう)」や、翡翠に似た発色をする「翠釉(みどりゆう)」など作風は幅広い。馬や風に揺らぐ草花などのモチーフが特徴的で、自然への愛着を感じさせる。

原清《鉄釉馬文大壺》2005年 同美術館蔵
原清《鈞窯八角鉢》1972-1973年 同美術館蔵
原清氏(茨城県陶芸美術館提供)

それぞれの道を究めた現代陶芸界の巨匠。対照的な作風の二人の作品が並ぶさまは壮観のひとこと。見学に訪れた地元の中学生たちも思わず足を止めて、じっくりと見入っていた。

同館では年明けの1月2日(土)から、日本遺産認定記念の「かまさしこ~兄弟産地が紡ぐ“焼き物語”」展も開催中。笠間市と益子町を繋ぐ歴史的背景に触れながら、焼き物文化を辿るパネル展示と、「かさましこ」などで活躍中の作家合計38人の陶芸作品展示を行う。

茨城県陶芸美術館の外観。「笠間芸術の森公園」の一角にあり、周辺には屋外イベント会場や、陶造形物が屋外に展示されている「陶の杜」などがある。また公園に隣接して「笠間工芸の丘KASAMAクラフトヒルズ」や茨城県立笠間陶芸大学校があり、焼き物の町の中核を担っている。

同館は2020年で開館20年を迎えた。正面入り口の横には過去の展覧会のポスターが掲示されており、地域の中心としての充実した活動を物語る。

詳しくは同館ホームページへ。

探訪・かさましこ②へ続く。

      (読売新聞東京本社事業局美術展ナビ編集班 岡部匡志)

 

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