探訪・金沢③ 県立美術館「日本美の心」展 生活工芸ミュージアム「研修所」展

(左)重要文化財《色絵雌雉香炉》  (右)国宝《色絵雉香炉》 

国立工芸館の隣にあるのが石川県立美術館。昭和34(1959)年、地方の県立美術館としてはかなり早い時期に開館した。その後、昭和58(1983)年に現在の建物を新設、移転した。県にゆかりのある作品を中心に収集。県文化財保存修復工房も設置され、文化財の修復や修復技術の研究、技術者の育成にも力を入れている。

野々村仁清作 国宝《色絵雉香炉》

所蔵品は古九谷から前田家伝来の宝物、石川県の作家を中心とした絵画、彫刻、工芸など3965点に及び、3016(所蔵品としては1点と数える)の浮世絵がある。国宝1点、重要文化財6点が含まれる。

有名なのが、野々村仁清作の国宝《色絵雉香炉》と重要文化財《色絵雌雉香炉》だ。《色絵雉香炉》は石川県在住の個人の所有だったものが県に寄贈された。昭和33年の富山国体の際に石川県内に宿泊された昭和天皇が、この香炉をご覧になり「広く国民に見て欲しい」と仰せになったのが後押しとなり、寄贈に踏み切ったという。同館は専用の展示室を設け昭和34年に開館、香炉は所蔵品第1号となった。雌雉香炉も寄贈先を捜していた東京在住の個人が、常時展示されている雄雉の隣にと、平成3年に寄贈したもの。2点は寄り添うように、現在も専用の展示室に並んでいる。

石川県立美術館「花木にみる日本美の心」展 1月4日()から

曲子光男《開春》1983年

豊かな自然と四季折々の美しさに恵まれた日本の風土。その中で育まれた日本人の情緒性、装飾的感性を表現するものとして多くの美術工芸品が制作された。この展覧会は自然に対する伝統の心を見つめ直し、四季の移ろいや旬を感じとってもらうことを目的としている。曲子光男《開春》、鈴木華邨《竹梅図》、中川一政《向日葵》、古九谷《青手椿図平鉢》、二代砺波宗斎《蘭花文蒔絵箱》、中村研一《枇杷図皿》、《盛上菊図》真宗大谷派金沢別院蔵など、同館の所蔵品を中心に50点を超える絵画や工芸品が並ぶ。

《青手椿図平鉢》古九谷
二代砺波宗斎《蘭花文蒔絵箱》1978年

「花木にみる日本美の心」展

2021年1月4日()27()

県立美術館(金沢市出羽町)

詳しくは同美術館ホームページ

 

いしかわ生活工芸ミュージアム 「いしかわの工芸研修所」展開催中

第3展示室にある「黄金の庵」  豊臣秀吉の「醍醐の花見屏風絵」庵を再現したもの。茶室は金沢建具の技術を用い、金箔、障子に貼られた紗(しゃ=うすぎぬ)などすべて地元の伝統工芸で作られている。

県立美術館から道を隔てた兼六園の一角にある、いしかわ生活工芸ミュージアム。正式名称は石川県立伝統産業工芸館と言い、2019年に全国から通称を募集して2020年に決定された。

和紙             和ろうそく

常設展には県内36業種すべての伝統的工芸品を展示している。個々に挙げる九谷焼、加賀友禅、輪島塗、山中漆器、金沢仏壇、金沢箔、七尾仏壇、金沢漆器、牛首紬、金沢繡(ぬい)、和紙、美川仏壇、桐工芸、檜細工、珠洲焼、加賀毛針、大樋(おおひ)焼、加賀竿、加賀獅子頭、加賀象嵌、加賀提灯、加賀水引細工、金沢表具、金沢和傘、郷土玩具、琴、三弦、太鼓、竹細工、茶の湯釜、鶴来(つるぎ)打刃物、手捺染(てなっせん)型彫刻、銅鑼、七尾和ろうそく、能登上布、能登花火。金沢を中心として石川県が実に豊富な伝統産業を育んで来たかがわかる。

加賀水引細工

3か所の工芸研修所

石川県には九谷焼、山中漆器、輪島塗の後継者を育成する工芸研修所がある。今回初めて、研修所の所蔵品や卒業生の作品を紹介する「いしかわの工芸研修所展」を開いている。伝統の技の上に若く清新な感性を加えた作品が並ぶ。

同時に猫をモチーフとした工芸品を集めた「こっそり猫展」も開催中=2021322()まで。

 

「いしかわの工芸研修所展」

2020年1211()2021125()

いしかわ生活工芸ミュージアム(金沢市兼六町)

詳しくは同ミュージアムホームページへ

 

探訪・金沢④に続く

 

(読売新聞事業局美術展ナビ編集班・秋山公哉)