探訪・金沢① 国立工芸館 「工の芸術―素材・わざ・風土」展開催中

国立工芸館 左が旧陸軍第9師団司令部。右が旧陸軍金沢偕行社

蒔絵、漆器、陶芸といった伝統工芸から現代美術まで、金沢市は美術品で溢れている。加賀藩前田家の城下町として栄え、古くから文化を育んできた街ならではの香りが漂う。特に兼六園の南には美術館や博物館が集中、歩いて見て回れる便利さもある。年末から新年にかけての見所を四つに分けて紹介する。

10月に東京から移転

まずは20201025日に東京国立近代美術館工芸館が移転して来た通称・国立工芸館。東京では旧近衛師団司令部(重要文化財)の建物を利用したものだったが、金沢での住まいは旧陸軍第9師団司令部と旧陸軍将校の集会所・金沢偕行社の建物だ。ともに国の登録有形文化財に登録されている明治期の建物で、金沢偕行社は移転工事の際に建築当初の色が分かり、窓枠など美しい薄緑色が再現された。

同館では1025日から、移転開館記念展第1弾として「工の芸術―素材・わざ・風土」展が開かれている。陶磁器やガラス、漆工、木工・竹工、染織、金工、人形など同館が所蔵する、全国の近現代日本工芸の名作約3900点のうち約130点が展示されている。会期は来年2021111(月=祝日)まで

旧司令部である展示館に入ると、映像で展示品を紹介するコーナーがある。大きなモニターに映し出された絵にタッチすると、作品の解説が見られる。コーナーの反対側はケヤキ造りの階段と漆喰装飾。明治の雰囲気を再現している。

名前の仕組み

記念展Ⅰは3章からなり第一章は「素材とわざの因数分解」。工芸品の名前は漢字ばかりで長い。名前は「素材」が「工芸作品」になるまでに、どれだけの工程が積み上げられてきたかとう証でもあるという。例えば富本憲吉の《色絵染付菱小格子文長手箱》(1941年)=写真下=。「色絵」とは赤の部分でガラス質の上絵。「染付」とは青の部分で下絵。「菱小格子文」はチェックの文様のこと。それらの工程を経た「長手箱」と言うことになる。命名のルールが分かると作品に施された複数の「わざ」を見つけるヒントになる。加守田章二《曲線彫文壺》(1970年)や板谷波山《氷華彩磁唐花文花瓶》(1929年)、音丸耕堂《堆漆紅梅香合》(1969年頃)などが展示されている。

仕事場を展示

2階に向かって階段を上がると、「うるしの神様」と呼ばれた金沢市出身の漆芸家・松田権六(18961986)の仕事場がある。東京にあったものを部分移築した。内部は4畳半ほどの広さで畳部分は2畳しかない。狭く感じるが、漆の作業をするにはほこりがたちにくく適しているのだそうだ。

松田権六の仕事場 写真=太田拓実

自然の模倣から

第二章は『「自然」のイメージを更新する』。日本の工芸品が「超絶技巧」の明治から、ハイテクノロジ―を用いた現代まで、どのように変化してきたかを見る。一般的には自然を模倣して移し替えるものから単純化へ進んでいくという。鈴木長吉の《十二の鷹》(1893)2019年の調査で電気メッキを施した可能性がでてきた。他に七代錦光山宗兵衛《上絵金彩花鳥図蓋付飾壺》(188497年頃)や増村益城《乾漆溜塗喰籠 亀甲》(1991)、小島有香子《積層硝子皿 月華》(2013)などが並ぶ。

鈴木長吉の《十二の鷹》のうちの3羽
第二章には七代錦光山宗兵衛《上絵金彩花鳥図蓋付飾壺》(1884~1897年頃)=中央=などが並ぶ

沖縄から石川へ

第三章は「風土―場所ともの」。ここでは場所とものの関係を軸にその土地ゆかりの人と作品を、沖縄から始まり石川を最後に展示する(写真下)

工芸館は夜も美しい

 

「工の芸術―素材・わざ・風土」展

2020年1025()2021111(月=祝日)

国立工芸館(金沢市出羽町)

詳細は同館ホームページ

 

探訪・金沢②に続く

 

(読売新聞事業局美術展ナビ編集班・秋山公哉)

 

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