【夢眠ナビ】第6回 ふくよかボッティチェリ

ふくよかボッティチェリ

金木犀が香り、木々も染まり、「美術館ナビ」をご覧の皆様には美術の秋だろうか。
私のメインはやはり、天高く馬肥ゆる秋……である。
2020年をまるごと新型コロナウイルスに支配されてしまい、自然と運動量も減り、筋肉も落ち、自粛中唯一の楽しみであった美味しいものを食べておなかまわりがずっしり。
いやぁ、さすがにそろそろダイエットしたほうがいいかな? という時に思い浮かべる言葉は「まだまだこんなもんじゃボッティチェリに描いてもらえんぞ?」である。

サンドロ・ボッティチェリといえば多くの人が教科書で見たことがあるであろう《ヴィーナスの誕生》で有名な、ルネサンス芸術期の画家である。
これまた教科書でお馴染みのメディチ家がパトロンとしてついていた。レオナルド・ダ・ヴィンチ(年下)と同じ師匠に弟子入りし、同時期に活躍していたが、お互い大事にするものが違いすぎたために、あまり仲良くはなかったようである。

ボッティチェリは歴史画を多く描き、その中でも神話画の一時代を築いている。
実はそれまで神話画は一般的ではなく、更には裸婦がモチーフになることも珍しかったそうだ。
《春(プリマヴェーラ)》に登場する薄衣に包まれている裸婦達は三美神で、愛と貞節と美を司っている。

サンドロ・ボッティチェリ《春(プリマヴェーラ)》
サンドロ・ボッティチェリ《春(プリマヴェーラ)》
ウフィツィ美術館蔵
写真提供:ユニフォトプレス

彼女達が、なんともいえないムチムチ具合で、それでいて美しい。
おしりなんてかなりドッテリとしており、初めて見た時から衝撃を受けた。
それからというもの自分がムチムチしてくるたびに彼の描いた三美神を思い出していたのだが、今回彼について調べてみると、衝撃の事実を知ることになった。

ボッティチェリ、本名ではなくまさかのあだ名。
しかも、彼のお兄ちゃんのあだ名だった。
意味はなんと「小さな樽」!

ぽっちゃり体型だったお兄ちゃんのからかわれ系あだ名がそのまま弟に受け継がれ、それを悪く思わずアーティストネームにしてしまうなんて……。しかし、なんとなく「ボッティチェリ=ぽっちゃりを素敵に描く画家」という認識になっていた私には、腑に落ちるエピソードであった。

 

<夢眠メモ>
サンドロ・ボッティチェリ《春(プリマヴェーラ)》は、イタリアのウフィツィ美術館の所蔵。なかなか海外に行けない昨今、ウフィツィ美術館では、美術館の雰囲気を味わえるヴァーチャルツアーを公式サイトで公開中。秋の夜長の“おうちでアート”に是非。
ウフィツィ美術館公式サイト「ヴァーチャルツアー」ページ(英語版)


夢眠ねむ(ユメミ ネム)
書店店主/キャラクタープロデューサー
多摩美術大学卒業
10年間続けたアイドル活動を引退後、本好きのためではなくこれからの本好きを育てる「夢眠書店」を下北沢で開業。書店経営と並行してミントグリーンのたぬき「たぬきゅん」と、その仲間たちのプロデュースを手掛けている。映像監督、作詞、パレード脚本、コラム執筆、キャラクターデザインなど活動は多岐に渡る。

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