【夢眠ナビ】第4回 クリムトと同じ日にうまれて

クリムトと同じ日にうまれて

自分と同じ誕生日の芸能人を意識してしまうことがあるが、私にとってのそれは「クリムト」だ。
美術家になりたかった中学生の頃、誕生日図鑑を片手に誰か同じ誕生日の画家はいないか……と探した時にいたのが彼だった。
それまで、たまに親と出かけた時に行くデパートの上の階にある中華料理屋さんに飾られているピカピカした絵、というだけのイメージだったのが、急に彼のことを身近に感じるようになった。

彼の絵といえば、女性の身体がメインモチーフ。
男女で寄り添い一体化しているようなものもあり、官能的な表情が特徴である。
金ピカでゴージャスなのに明るくはない。セクシーでアンニュイ。エロティックな作風である。
クリムトのことを調べると、彼の家には女性が大勢出入り、寝泊まりして、裸婦モデルを務めたが、その多くと愛人関係にあったそう……。
う~ん、なかなか刺激的。
今の時代だとなかなか実現不可能な状況だが、才能があり生涯独身を貫いたっていうところがポイントなのだろうか。

私の一番好きな絵は《ヘレーネ・クリムトの肖像》。
ヘレーネは、彼の亡き弟の忘れ形見で、実の姪である。
姪ということで、先述した“官能的”イメージのクリムト作品とは全く違う。
「分離派」の活動を通じて作風に変化が出始めた頃の作品だが、それだけではない気もする。
私も叔母になり、「姪」という存在がいかに可愛く愛おしいか手に取るようにわかる。
スマホのカメラで写真や動画を撮りまくり、彼女の成長を逃すまいと必死に保存しているが、クリムトは自分の方法で姪の無垢な可愛らしさを残したかったんじゃないだろうか。

グスタフ・クリムト《ヘレーネ・クリムトの肖像》
グスタフ・クリムト《ヘレーネ・クリムトの肖像》
1898年 個人蔵(ベルン美術館寄託)
画像提供:ユニフォト・プレス

親しい人に一度、「君はクリムトの姪に似ているよね」と言われ、誕生日の一件で彼を身近に感じていた私は、彼の姪になったような気分で嬉しくなった。
この絵は6歳の少女で、当時私は21歳だったが……。
ハロウィンで絵画の仮装をすることがあったら、クリムトの姪をやりたい。

 

<夢眠メモ>
《ヘレーネ・クリムトの肖像》は、昨年、東京、愛知で開催された「クリムト展 ウィーンと日本 1900」展で来日。クリムトの作品を所蔵する日本の美術館は、愛知県美術館、姫路市立美術館、豊田市美術館など。豊田市美術館で10月17日からはじまる展覧会「開館25周年記念コレクション展VISION|DISTANCE いま見える景色」で、《オイゲニア・プリマフェージの肖像》も展示予定。
豊田市美術館公式サイト


夢眠ねむ(ユメミ ネム)
書店店主/キャラクタープロデューサー
多摩美術大学卒業
10年間続けたアイドル活動を引退後、本好きのためではなくこれからの本好きを育てる「夢眠書店」を下北沢で開業。書店経営と並行してミントグリーンのたぬき「たぬきゅん」と、その仲間たちのプロデュースを手掛けている。映像監督、作詞、パレード脚本、コラム執筆、キャラクターデザインなど活動は多岐に渡る。

公式Twitter
公式note

直前の記事

新着情報一覧へ戻る