【夢眠ナビ】第5回 ”小枠”な浮世絵

”小枠”な浮世絵

2020年はオリンピック・イヤーになるはずだったためか、都内の美術館も日本らしい企画展が多いように感じた。
日本を代表するといえば、浮世絵である。
浮世絵は日本国内のみならず海外で人気があり、所蔵元も海外の美術館が多いほどだ。
ジャポニスムのブームにより、多くの画家たちが影響を受け、浮世絵をモチーフにした作品も多く残っている。

浮世絵は江戸時代にうまれた絵画で、庶民の間で大流行した。
美人画から江戸で働く身近な女性などの風俗画、役者絵とどんどん求められるテーマ、流行も移り変わっていった。

浮世絵は、絵師による肉筆画と、量産するための木版画の2種類に分かれる。
木版画は、初期のモノクロの墨摺絵からどんどん進化して、極彩色で表現される錦絵と呼ばれる技法が発明された。
木版画なのでたくさんの工程があり、絵師が描いた絵をもとに彫師が彫り、摺師が摺る分担作業で成り立っている。

彫りの凄みをとくに味わえるのは着物。
江戸時代はこんなに柄ON柄に溢れていたのかと衝撃を受ける。
このテキスタイルの洋服があったら欲しいなぁ……という関心の次に、あれっ、そういえばこれって木に彫ってるんだよな……? いやいやこの細かいチェック柄なんてレーザー彫刻じゃないと不可能じゃない? 人間が?? 彫ったの??? と目を疑うほど細かい。
言葉を選ばず言うと、変態的なほどである(褒めている)。
同じく、摺師が凝り性であればあるほど背景のグラデーションが繊細で、分担作業であるからこそ個々の仕事が際立って美しい。

歌川国貞「今様三十二相 すゞしさう」
歌川国貞「今様三十二相  すゞしさう」
太田記念美術館蔵

浮世絵を見ていると、かなりの確率で小粋ならぬ”小枠”が登場する。
テレビ番組で、VTRを見る芸能人が映る”ワイプ”にも似ていて、メインの美男美女が真ん中にどーんといる上の方に円や角の取れた四角、書物や巻物のように仕切られた枠がある。
その枠内に美味しい食べ物や名所の景色、その説明文などが描かれており、絵画でありながらとてもデザイン的で面白い。
浮世絵自体、歌舞伎役者のブロマイドのような機能が有名だが、情報誌的なポジションも担っていたのだろうか。

絵画でありながら、蕎麦一杯分ほどで買える手軽さだった浮世絵。
いい役者だなぁ、美人だなぁ、こんな着物欲しいなぁ、この甘味美味しそう!……など、雑誌をめくるように楽しむのも江戸時代の楽しみ方に近いのかもしれない。

 

<夢眠メモ>
東京・原宿にある浮世絵専門の太田記念美術館は、約14,000点という膨大な浮世絵コレクションをテーマに沿った企画展で紹介している。最新の展覧会「江戸の土木」(10月10日~11月8日)では、歌川広重や葛飾北斎などの絵師たちが描いた作品を手がかりとして、江戸の土木を読み解く。フォロワー13万人を超える公式Twitterアカウントでは、浮世絵や江戸文化にまつわる情報発信が満載(他の美術館の情報まで!)。
太田記念美術館公式サイト
太田記念美術館公式Twitter


夢眠ねむ(ユメミ ネム)
書店店主/キャラクタープロデューサー
多摩美術大学卒業
10年間続けたアイドル活動を引退後、本好きのためではなくこれからの本好きを育てる「夢眠書店」を下北沢で開業。書店経営と並行してミントグリーンのたぬき「たぬきゅん」と、その仲間たちのプロデュースを手掛けている。映像監督、作詞、パレード脚本、コラム執筆、キャラクターデザインなど活動は多岐に渡る。

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