【夢眠ナビ】第3回 たっぷりの色と愛情 エリック・カール

たっぷりの色と愛情 エリック・カール

エリック・カール。
こどもたちが『一番最初に好きになる画家』と言っても過言ではない。
エリックは、「アートらしいアート」も制作するが(デザイン経験者らしい言い回しでとても好き)、メインは絵本作家なので書店を経営している私にとって、一番触れる機会が多い絵描きでもある。
代表作といえば、なんといっても《はらぺこあおむし》!
62ヵ国語で翻訳されており、言葉だけでなく、点字と手触りで読めるものもある。大阪のみんぱく(国立民族学博物館)の言語展示室に、世界各国バージョンの《はらぺこあおむし》がずらりと並んでいる様は圧巻だ。

立川にできたPLAY! MUSEUMで原画を観ていると「げっつようびー♪ げっつようびー♪」とあおむしの歌が響く。こんなに心が洗われる“ミュージアム・ノイズ”があろうか……。これはうちの書店でもよく見られる光景なのだが、文字がまだ読めない子も暗記しており、そらで歌える。彼の作品が幼い子らに愛されている証拠である。

エリック・カール「はらぺこあおむし」
エリック・カール《はらぺこあおむし》
画像提供:PLAY!

彼の手法はコラージュ。薄い紙に色を塗り、さらに重ね、滲み、筆跡や模様をつけ、それを切り貼りしたエリックの絵をみると「惜しまない」という言葉が浮かぶ。
色、模様も、たっぷり。
動物たちへの尊敬、読者のこどもへの愛情も、たっぷり。
愛する絵に対してなにもかも惜しまないが、戦前生まれのエリックは切り抜いた後の素材も大切にして絶対捨てないそうだ。
そんなエリックだからこそ表現できる豊かさがあるのだろう。

展覧会会場で作家が実際に描いている映像を見て、使っている画材を知ることができるのも楽しみのひとつ。
じぃーっと見ていると、あることに気づいた。
オイルクレヨン、私と同じだ……。
使っている画材が同じだとしても、とくになんにもないのだけど、なんだかそれだけでうきうきとなる。
美術展にいって、「はい、おしまい」ではなく、エリックの絵は「私も絵が描きたい!」と自分の中に眠る創作意欲を刺激してくれる。

今すぐ、何か描きたい!

 

<夢眠メモ>
東京・立川に2020年6月にオープンしたPLAY! MUSEUMでは、2021年3月28日まで、常設展「エリック・カール 遊ぶための本」が開催中。世界的ベストセラー作家が生み出す、おもちゃのような絵本の世界を紹介。大きなオブジェや楽しい映像とともに、エリック・カールが描いた美しい絵本原画をたっぷり展示している。
PLAY! MUSEUM公式サイト


夢眠ねむ(ユメミ ネム)
書店店主/キャラクタープロデューサー
多摩美術大学卒業
10年間続けたアイドル活動を引退後、本好きのためではなくこれからの本好きを育てる「夢眠書店」を下北沢で開業。書店経営と並行してミントグリーンのたぬき「たぬきゅん」と、その仲間たちのプロデュースを手掛けている。映像監督、作詞、パレード脚本、コラム執筆、キャラクターデザインなど活動は多岐に渡る。

公式Twitter
公式note

直前の記事

新着情報一覧へ戻る