暗黙の「ドレス・コード」その服を着るのはなぜ?

ファッションとアートの深い関わりを探る「モードな展覧会」。今回は「ドレス・コード?〈着る人たちのゲーム〉」展(京都国立近代美術館、熊本市現代美術館)を読売新聞の記者が紹介します。

ドレス・コード? ── 着る人たちのゲーム

2019年8月9日(金)~10月14日(月・祝)   京都国立近代美術館

2019年12月8日(日)〜 2020年2月23日(日) 熊本市現代美術館

 毎日何気なく身につけている服の「お約束」を探る刺激的な展覧会が「ドレス・コード? ── 着る人たちのゲーム」です。終了間際にようやく見にいけたので、報告しますね。京都の後は熊本に巡回しますので、機会があればぜひに。

この展覧会のユニークな点は、ブランドやデザイナーにフォーカスするのではなく、「服を着る人」自体がテーマになっていること。不思議な空間を一巡すると、ファッションに対する見方がちょっと変わるかもしれません。

コムデギャルソンのドレスは、画家・高橋真琴さんの作品が背中に(左)。パリコレ映像とともに見られる贅沢

 

突きつけられる13のクエスチョン

最初に展示されているのは、古着の山を前に裸のビーナスの像がたたずむ「ぼろきれのビーナス」。そこには「裸で外を歩いてはならない?」というクエスチョン。

ミケランジェロ・ピストレット《ぼろきれのビーナス》1967年 豊田市美術館

 

展覧会のタイトルにも「?」がついていますが、会場の13のコーナーごとに「誰もがファッショナブルである?」「他人の眼を気にしなければならない?」と質問のパネルから展示が始まります。

京都服飾文化研究財団キュレーターの石関亮(まこと)さんは、「『人は見た目が9割』という本が話題になりましたが、私たちは日々の中でなんとなく服の着方や選び方などで相手を判断している。互いに見たり見られたりするゲームのような関係性が、服を着るという行為の中にひそんでいます」。

「大人の言うことを聞いてはいけない?」では反逆のタータンチェック

 

だから、タイトルも「ゲーム」。身分や性差、属性など、知らず知らずのうちに、自分が縛られている「らしさ」や「思い込み」に気づく。そんな構成になっているのです。

デニムやトレンチコート、服の中に潜むドラマ

そんな数々の問いをゴージャスに彩るのは、同財団が所蔵する服の数々。「高貴なふるまいをしなければならない?」という問いには、革命期のフランスを舞台にした坂本眞一さんの漫画「イノサン」とコラボ。「イノサン」の登場人物が、舞台となっている18世紀後半の宮廷服を着こなしています。描き下ろしです。

美しい18世紀後半のドレスと「イノサン」がコラボ

 

デニムやトレンチコートといった身近な素材やアイテムの歴史を知ることができるのも魅力。「生き残りをかけて闘わなければならない?」でとりあげられているのは、軍服から誕生したトレンチコートや迷彩柄。ジャン=ポール・ゴルチエの迷彩柄の浴衣やジュンヤワタナベの迷彩柄のドレス、まるでウエディングドレスのような繊細な白いローンに刺繍をほどこしたタオ コム デ ギャルソンのトレンチコートなどが並び、元のイメージとは違う表情をまとって服が進化していくさまがわかります。

 

ヤンキーからお水スーツまで、あなたはどの部族?

都築響一さんが選んだ「ニッポンの洋服」の写真の数々には、同じ時代に生きていても、驚くような姿もあるとつくづく感じました。肌をカラフルに染めたり、地下アイドルだったり、夜の世界のスーツだったり。

都築響一〈選〉/ラマスキー《異色肌》2017年

 

まさに「トライブ(部族)」のように、その姿こそがアイデンティティである、強烈な個性。自分はなぜ、働きトライブとして無難なスーツを着ているのかなぁと思ったりして。。

「ニッポンの洋服」の写真の前に、いろんなテイストをミックスさせた服が

 

世界の各都市でスナップ写真を撮影しているハンス・エイケルブームの作品からは、時代の意識というか、つながりのようなものも感じます。

ハンス・エイケルブーム《Photo Notes 1992-2017》 1992–2017年 作家蔵© Hans Eijkelboom

 

そして部屋全体が作品になっている《ひびの、A to Z》。劇作家の藤田貴大さんが26人の男女の服にまつわるモノローグをテキストと写真、インスタレーションで表現していました。リアルな言葉が満載です。

気づかずに、歴史を着ていたり、時代を着ていたり、アートを着ていたり。そう考えると、自分の「らしさ」ってなんだろう、と考えてみたくなります。

鑑賞のおともに

今回の展覧会にあわせて作られたブローチ(税抜き900円)。京都服飾文化研究財団が所蔵する18世紀の貴族の服の美しい刺繍ボタンを復刻して、ブローチに。美しい。

 

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