静嘉堂文庫美術館で「入門 墨の美術」展開催中

秋の気配を深める東京・世田谷区岡本の静嘉堂文庫美術館で、「入門 墨の美術 ─ 古写経・古筆・水墨画 ─」展が10月14日まで開かれている。同館が所蔵する名品の中から厳選した「古写経」「古筆」「水墨画」を約30点展示。併せて中国・清代の古墨や印材も紹介している。
古写経は「大般若波羅蜜多経 巻第二四五」(和銅五年長屋王願経)、光明皇后が父・藤原不比等と母・県犬養三千代(あがたのいぬかいのみちよ)の追善供養に発願した一切経「華手経 巻第四」(五月一日経)などを展示する。

平安~鎌倉時代の古筆は「古今和歌集 高野切」(第三種)の断簡、大陸から舶載された唐紙を華麗に装飾した料紙に書かれた国宝「倭漢朗詠抄 太田切」(下軸)、「寸松庵色紙」、重要文化財「是則集」など名だたる優品が並んだ。


水墨画は重要文化財「寒山図」(中国・元時代・13~14世紀)、重要文化財「聴松軒図」「万里橋図」(いずれも室町時代・15世紀)、重要文化財の伝周文「四季山水図屏風」(室町時代・15世紀)、雪村周継「柳鷺図」(室町時代・16世紀)、西湖図屏風など。

内覧会で河野元昭館長は「書も画も同じ墨を使うのは東洋だけの特質だった。東洋の『書画一致』思想の根底には、墨というマテリアル(素材)の問題があったのではないかと私は見ています」と述べた。担当の浦木賢治学芸員は「日本美術の王道と言える奈良時代の古写経、平安~鎌倉の古筆、室町時代の水墨画を、ほぼ日本で描かれたものに限定して紹介した」と展示構成を説明した。
◇
「入門 墨の美術 ─ 古写経・古筆・水墨画 ─」
2019年8月31日(土)~10月14日(月・祝) 静嘉堂文庫美術館(東京都世田谷区)
