クロード・モネ《睡蓮、柳の反映》【「ポケモン」で読み解く、話題の1点!】第4回

クロード・モネ《睡蓮、柳の反映》

2016年、パリで発見されたモネの《睡蓮、柳の反映》。国立西洋美術館の礎となる美術品コレクションを築いた松方幸次郎が、モネ本人から直々に購入しフランスで保管していた作品です。しかし、第二次世界大戦が勃発し、そのゴタゴタの中で、《睡蓮、柳の反映》は行方不明に。約60年にわたって、歴史の表舞台から消えていたのです。再びその姿を現した時、作品の上半分は残念ながら欠損していました。さらに、残っていた下半分にも、亀裂や剥落など大きなダメージがあったそうです。しかし、松方コレクション展の開催に合わせ、慎重に修復作業が行われたのだそう。そして、見事、モネの手による荒々しい筆致や豊かな色彩が蘇ったのです。
そんな修復を終えたばかりの“幻の睡蓮”こと《睡蓮、柳の反映》を目にしたとき、あの幻のポケモンのことを思い出してしまいました。オーロラポケモンのスイクンです。「スイレン」と「スイクン」で名前が似ているから?水色、緑、紫とカラーリングが似ているから?それとも、どちらも高さが2mだから?いえいえ、そういう理由ではありません。
修復前は少し水面がにごっているかのような色合いでしたが、まぁなんということでしょう、修復の匠の手により劇的大変身!水面には柳の木がくっきりと色鮮やかに映りこんでいました。
「せかいじゅうを かけめぐり よごれた みずを きよめている。きたかぜと ともに はしりさる。」見事、絵の中の水を浄めた修復家さんたちは、もしかすると、そんなスイクンと同じような力を持っていたのかもしれませんね。
あまりにも生まれ変わった《睡蓮、柳の反映》が清々しい印象だったため、作品を前にした瞬間に、心にスーッと風が吹いたような気がしました。あれは北風だったのでしょうか。
(アートテラー・とに~)
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開催中~2019年9月23日(月・祝) 国立西洋美術館
国立西洋美術館が1959年に設立されるきっかけとなった「松方コレクション」。西美開館60周年を記念した本展では、今はオルセー美術館に所蔵されているゴッホの傑作≪アルルの寝室≫や、長年行方が分からず2016年に発見されて話題を呼んだモネの≪睡蓮、柳の反映≫など、国内外に散逸した名品も含めた松方旧蔵作品など約160点を歴史資料とともに展示しています。
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アートテラー・とに~
1983年生まれ。元吉本興業のお笑い芸人。
芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、現在は、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動。
美術館での公式トークイベントでのガイドや美術講座の講師、アートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など、幅広く活動中。
アートブログ https://ameblo.jp/artony/
《主な著書》 『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社) 『こども国宝びっくりずかん』(小学館)