日本の女学生服が世界の「Kawaii」になったわけ 「ニッポン制服百年史」展  【モードな展覧会】第2回

ファッションとアートには深い関わりがあります。美術館やギャラリーを持つブランドも多く、「美」を作る者同士、触発しあう関係にあります。そんなファッションにゆかりがある「モードな展覧会」を読売新聞で長くファッションを取材してきた生活部の記者が紹介します。

 

 

「ニッポン制服百年史ー女学生服がポップカルチャーになった!」

 

2019年4月4日(木)~ 6月30日(日) 弥生美術館(東京都文京区弥生)

※展覧会の内容をまとめた本『ニッポン制服百年史』(森伸之監修、内田静枝編著)は河出書房新社から刊行

 

平成が終わり、令和を迎えた今だからこそ行きたい展覧会が東京都文京区の弥生美術館で開催中です。タイトルは「ニッポン制服百年史」。洋装の女子制服が1919年に東京で誕生してから今年で100年。大正、昭和、平成と三つの時代をへて、制服が日本の「カワイイ」文化の代表格として世界に知られるまでの変遷を知ることができます。

江口寿史「KAWAII」 2011   ©Eguchi Hisashi

平成は制服の時代だった!

展覧会ポスターを描いたのは漫画家でイラストレーターの江口寿史さん。ポップなイラストに、1980年代初頭に連載された名作漫画「ストップ!! ひばりくん!」を思いだしました。制服女子のキュートでパワフルな魅力が凝縮されています。

企画した学芸員の内田静枝さんによると「平成は制服の時代と言えます」。ルーズソックスやコギャルファッションなど女子高生が社会の関心を集めただけでなく、平成時代30年間で、全国に約2万校ある中・高校の約半数が制服のモデルチェンジを行ったからだそう。「ティーンエージャーの魅力を輝かせる服の形が進化していきました」

会場では、そんな制服の写真やイラストのほか、菅公学生服(カンコー)が協力した実際の制服、リカちゃん人形が着る各地の制服のミニチュアまで、様々なトレンドや着こなしが並びます。

山脇学園のワンピース式制服
リカちゃん人形で母校の制服を見る

 

はじまりは大正、戦時下でのもんぺ姿、そしてヤンキー

日本第1号の洋装の制服は、東京の山脇学園のワンピース式制服。初代校長の山脇房子が、袴に編み上げ靴姿といった従来の和装を見直し、ベルトでしめるワンピースを考案しました。なんと今もこの形の制服が使われていて、お下げ髪にあわせるのが伝統的な山脇のスタイルだとか。

その後、各地に洋装、特にセーラー服が広がり、昭和の戦時下ではヘチマ衿にもんぺ姿の女学生の写真が並びます。
昭和時代で印象深いスタイルは、1970年代に流行した変形学生服。女子は裾を短くしたセーラー服の上着に、床に届きそうなほど長いスカート。男子はボンタンやドカンと呼ばれた太いズボンをはくスタイルです。「スケ番」っていう呼び名もありましたねぇ。制服は抑圧の象徴として、私服を求める流れもありました。制服がなくても、制服風の服を着る人もいる現代からみると、隔世の感があります。

 

かわいい制服が進化、そして世界へ

1980年代以降、学生獲得のために制服のモデルチェンジをする学校が増え、制服はよりかわいらしく進化していきます。有名デザイナーが手がけたり、コンペ方式を取り入れたり。タータンチェックのプリーツスカートにブレザー、ハイソックスが流行します。
90年代にはルーズソックスでコギャル風に着崩すのが広まり、その反動のように2000年代以降は上品で清らかな形が広がります。今ではトランスジェンダーや宗教に配慮する動きもあるそうです。

館内の撮影スポットは、森伸之さん描く女子高校生

 

なにより面白いのは、制服が漫画やアニメを通じて世界に広がり、今では制服が海外でも人気だということ。制服といっても、特に学校指定ではないので、制服風のファッションですが、竹下通りにお店を作り、中国にも進出するメーカーが登場しています。
内田さんは「決められた型の中でおしゃれしたり、着こなしを工夫したり、形が決まった中でアレンジをするのが日本人は得意。そんな日本の姿が制服から見えてきます」。かわいくなりたい、仲間と一緒にいたい、などいつの時代も変わらぬ乙女心も見えます。

会場で見逃せないのが、今日マチ子、かとうれい、和遥(かずはる)キナら、人気漫画家、イラストレーターの描いたイラストです。書き下ろしもあり、せつないような叙情をたたえた絵から、学生の時にしか着られない「制服」という名の期間限定ファッションの輝きを感じました。

今日マチ子「まちぶせ」(『センネン画報』より)2009年11月3日 ©今日マチ子
森伸之「ミニスカートの女子高生」 2011年 ©森伸之

 

併設のカフェで「改元カプチーノ」

弥生美術館には、レトロな雰囲気がすてきなカフェが併設されています。この展覧会にあわせたメニューがチョコミント味の「改元カプチーノ」(650円)。平成と令和の元号がパウダーで描かれていて(「書きやすい漢字の元号で良かった」と令和が決まった時にカフェのスタッフは思ったそう)、ほんのりミントが効いたチョコレート味。「青春」な感じのドリンクです。

( 読売新聞東京本社編集局生活部次長 大森亜紀)

*1990年、読売新聞東京本社に入社して山形支局に赴任。酒どころで鍛えられたおかげで、いける口になる。医療情報部を経て、生活部でファッションや食などを担当。趣味は、世界の美術館&料理教室めぐり。

 

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