春なのに お別れですか?な展覧会トップ3【アートテラー・とに~の今月コレを見逃しちゃいけま展!】

今年は、例年よりも春の訪れが早いですね。ポカポカとした陽気が少しでも早く味わえるのは喜ばしい限りですが、花粉症に苦しむ生活が例年よりも早くやってきてしまったのは、まったくありがたくないです。
さてさて、卒業式に年度末、3月は「別れ」の季節です。しかも、平成も残すところあと2ヶ月ということもあり、例年以上に「別れ」を意識する3月となりましょう。考えてみれば、上映や上演が終わっても、DVDなど映像化される映画や舞台と違って、展覧会はその会期にしか楽しめないもの。まさに一期一会です。訪れるすべての展覧会に、出会いと別れがあると言っても過言ではないですが、その中でも特に「別れ」を感じる3つの展覧会をセレクト。「春なのに お別れですか?な展覧会トップ3」をご紹介いたします。

その1 Bunkamuraザ・ミュージアム「クマのプーさん展」(2/94/14

あの羽生結弦選手を含め世界中の人々に愛されているクマのプーさん。その原画や資料を世界最大規模で所蔵するイギリスの国立博物館ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館から200点以上もの貴重なコレクションが来日している展覧会です。見どころは何と言っても、挿絵画家E.H.シェパードによる可愛らしい原画の数々。キャラクターたちが今にも動き出しそうなほど、生き生きとした姿で描かれています。なお、これらの貴重な原画は、非常に大切に保管されているため、2年公開すると、その後10年は非公開にするルールが採用されているのだそう。少なくとも、10年の間はお別れです。しかも、10年後に日本に再び来てくれるかどうかはわかりません!

「ながいあいだ、三人はだまって、下を流れてゆく川をながめていました」、『プー横丁にたった家』第6章、E.H.シェパード、鉛筆画、1928年、 ジェームス・デュボース・コレクション © The Shepard Trust

さてさて、この展覧会を通じて初めて、児童文学の『クマのプーさん』に触れたのですが(←恥ずかしながら、ディズニーの1キャラクターとばかり……)。物語のラストで描かれていた、プーさんら森の仲間とクリストファー・ロビンの別れのシーンに、思わず胸がキュッと締め付けられました。別れと旅立ちがテーマのお話だったのですね。ちなみに、展示室を出た後に待ち受けているのは、グッズ売り場。会場限定のマグカップやオリジナルパッケージのはちみつなど、約200点以上の会場限定アイテムが取り揃えられています。皆様もお気に入りのプーさんグッズと出会えますように。

その2 埼玉県立近代美術館「インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」(2/23/24


国立西洋美術館の「ル・コルビュジエ展」に、東京ステーションギャラリーの「アルヴァ・アアルト展」に、パナソニック汐留ミュージアムの「子どものための建築と空間展」に。今、建築展がプチブームとなっています。そんな中、埼玉県立近代美術館で開催されているのは、ちょっと一風変わった建築展。技術的であったり、社会的であったり、ワケあって実際には建てられることがなかった建築ばかりが紹介されています。ソヴィエトの芸術家ウラジーミル・タトリンによって構想された鉄製の塔にはじまり、会場では安藤忠雄さんや黒川紀章さんといった有名建築家の「インポッシブル・アーキテクチャー」の図面や資料が展示されています。


ラストを締めくくるのは、イラク出身の女性建築家ザハ・ハディドによる新国立競技場のプロジェクトです。「アンビルトの女王」の異名を持つ彼女が提案した大胆かつ斬新な新国立競技場のプランは、一度は採用されながらも、すったもんだの挙句、アンビルトに。つまり、この世に生を受けぬまま、お別れとなってしまいました。そんな幻の建築にまつわる膨大な量の設計資料や300分の1スケールの模型が、会場では紹介されています。この新国立競技場が、東京に誕生していたならば。そう想いを馳せてご覧くださいませ。

その3 アミューズミュージアム「美しいぼろ布展~都築響一が見たBORO~」(2018/3/302019/3/31

今よりも布がずっと貴重だった時代。特に東北の寒冷地に住む人たちは、寒さに耐えるために、小さな布の切れ端を繋ぎ合わせて、衣服や布団を作りました。布が傷んだら、また切れ端で継ぎ当てを重ねて、何世代にもわたって受け継がれた「ぼろ布」は、実は今、奇跡のテキスタイルアート「BORO」として、世界中のデザイナーやクリエイターから熱い注目を浴びています。そんなBOROにいち早く目を付け、2009年からその魅力を発信し続けてきたのが、浅草寺の東隣にあるアミューズミュージアム。サザンオールスターズや福山雅治さんが所属するあの芸能事務所アミューズが運営する美術館です。

今では、日本国内だけでなく、世界中の一流デザイナーも訪れるというこの知る人ぞ知る美術館ですが。建物がボロ……もとい、老朽化したため、なんと今月31日をもって閉館となります。浅草の地からお別れ。今後の予定は、現時点では未定だそうです。もしかしたら、BOROが都内で観られるラストチャンスかも!

ちなみに、10年間の大トリを飾るのは、写真家で編集者の都築響一氏が新たに青森で撮り下ろした写真作品と実物のBOROとを取り合わせた展覧会。BOROに込められた人々の想いに、アミューズミュージアムのフィナーレに、涙がBOROBORO零れ落ちることでしょう。ハンカチをどうぞお忘れなく。

さてさて、実は【今月コレを見逃しちゃいけま展!】は今回が最終回。1年間お付き合い頂きましてありがとうございました。ひとまず皆さまとは、お別れとなりますが、またこのページで、もしくは美術展の会場でお会いできるのを楽しみにしております!

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アートテラー・とに~

1983年生まれ。元吉本興業のお笑い芸人。

芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、現在は、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動。

美術館での公式トークイベントでのガイドや美術講座の講師、アートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など、幅広く活動中。

アートブログ https://ameblo.jp/artony/

《主な著書》 『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社) 『こども国宝びっくりずかん』(小学館)

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