【アートテラー・とに~の今月コレを見逃しちゃいけま展!】女性アーティストからのプレゼント!バレンタインの季節に訪れたい展覧会トップ3

2月。まだまだ寒い日が続きますね。皆さま、風邪など引いていませんか? こう寒い季節だからこそ、素敵な美術作品に触れて、心を温めたいところ。しっかり寒さ対策をして、美術展へと足を運びましょう。
さてさて、2月といえば、バレンタインデー。一部の人にとっては、ウキウキワクワクするイベントなのでしょうが、チョコを貰う予定のない人間にとっては憂鬱でしかないイベントです・・・・・って、自分のことはどうでもいいですね。まぁ、でも、この時期に開催されている女性アーティストの展覧会は、彼女たちからの贈り物というわけで。ある意味、美術ファンへのバレンタインのプレゼントと言えるのかもしれません。そこで、今回は、チョコっと強引ではありますが(笑)、「女性アーティストからのプレゼント!バレンタインの季節に訪れたい展覧会トップ3」をお届けいたします。

その1 東京都庭園美術館「岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」(1/264/7
《夜間訪問》©Okanoue Toshiko, 東京国立近代美術館蔵

1950年代に彗星のごとく登場し、美術評論家・瀧口修造によってその才能を見出されるも、結婚を機に美術界から姿を消してしまった岡上淑子(おかのうえとしこ 1928~)さん。その後、長らくその存在を忘れられてしまっていましたが、1996年に「幻のアーティスト」として「再発見」されます。現代の眼で見ても新鮮で、かつ独創的なフォトコラージュ作品世界の虜になる美術ファンは、今なお後を絶ちません。そんな岡上さんの都内の公立美術館での待望の初個展。国内の美術館から、伝説のフォトコラージュ作品が大集結。さらに、ヒューストン美術館から貴重なコラージュ作品が12点里帰り!

《会議》©Okanoue Toshiko, ヒューストン美術館蔵

それに加えて、岡上さんのコラージュ作品の源泉となった50年代のハイファッションも併せて展示されています。
岡上淑子さんの妖しく幻想的な世界観と旧朝香宮邸であった東京都庭園美術館の本館のクラシカルな雰囲気がベストマッチ! あまりに素敵な美術展なので、沈黙しておきたかったくらいです(←結局、我慢できませんでしたが)

その2 ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション「南桂子展 コト、コト。コトリ。」(2/24/11
《時計台》1985年

水天宮前駅のほど近くにあるミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション。カラーメゾチントの開拓者として、エンサイクロペディア・ブリタニカにもその名を残す国際的な版画家・浜口陽三(1909~2000)の作品を収蔵、展示する「隠れ家系」美術館です。カラーメゾチントとは、途方もなく手間がかかる銅版画の技法。説明するのも、途方もなく手間がかかってしまうので、そこは割愛いたします(笑)。気になった方は是非美術館で、職員さんにお尋ねください。
そんなミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションで、今月よりスタートしたのは、浜口陽三さんではなく、その最愛の妻である南桂子(1911~2004)をフィーチャーした展覧会です(浜口作品も10点ほど展示されています)。彼女もまた銅版画家。鳥や少女をモチーフに、無数の繊細な線から生み出される絵本のような作品世界は、国内外で高い評価を得ており、かつてはユニセフのカレンダーにも採用されたことも。今回の展覧会では、耳をすませば、「コト、コト。コトリ。」という音が聞こえてきそうな、とりわけ繊細な世界観の作品が50点ほど紹介されています。

《サボテンと塔》1978年

美術館に併設されたCafé Musée H (カフェ・ミュゼ・アッシュ)の人気メニュー・ガトーショコラセットとともにお楽しみください。

 

その3 原美術館「『ソフィ カル限局性激痛』原美術館コレクションより」(1/53/28
「ソフィ カル―限局性激痛」原美術館コレクションより 展示風景
©Sophie Calle / ADAGP Paris and JASPAR Tokyo, 2018 Photo by Keizo Kioku

ラストは、少しほろ苦い展覧会をご紹介いたしましょう。2020年末をもって閉館することが発表された品川の原美術館で、現在開催されているのは「『ソフィ カル―限局性激痛』原美術館コレクションより」という展覧会。1999年に原美術館で開催され、大きな話題を呼んだソフィ・カル(1953~)の日本初個展「限局性激痛」を19年ぶりに完全再現した展覧会です。
展覧会のテーマとなるのは、失恋。それも、ソフィ・カル本人が経験した辛い失恋です。展覧会は、2部構成。前半パートでは、失恋するその日までが、当時の手紙や写真とともにカウントダウンで紹介されています。後半パートは、彼氏の裏切りからスタート。失恋という自らに降り掛かった不幸話を他人に語り、その相手から最も辛かった体験を聞くことで、自分自身の心の傷を少しずつ癒やし、立ち直ってゆく。その生々しい過程が写真と刺繍によって紹介されています。たまには泣きたい日もある。そんな時にピッタリの展覧会です。

Sophie Calle Exquisite Pain, 1984-2003
© Sophie Calle / ADAGP, Paris 2018 and JASPAR, Tokyo, 2018

なお、原美術館の広報さんより、こんなコメントを頂戴しております。「展覧会は失恋、ではありますが、読者の方は失恋されないことを祈ります・・・。」
ハッピーバレンタイン!!

 

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アートテラー・とに~

1983年生まれ。元吉本興業のお笑い芸人。

芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、現在は、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動。

美術館での公式トークイベントでのガイドや美術講座の講師、アートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など、幅広く活動中。

アートブログ https://ameblo.jp/artony/

《主な著書》 『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社) 『こども国宝びっくりずかん』(小学館)

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