【アートテラー・とに~の今月コレを見逃しちゃいけま展!】猪突猛進……改め、勇往邁進。我が道を行くアーティストに出逢える展覧会トップ3

あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。
皆さまが実りの多いアートライフが送れるように、本年も見逃しちゃいけない展覧会をいろいろリコメンド&リマインドしていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
さてさて、今年2019年は亥年。ということで、新年1発目は、自分の信念を貫いて、独自の路線を突き進む「猪突猛進」タイプのアーティストに出逢える展覧会トップ3を紹介したいと思います!
……と、「猪突猛進」に書き進めようとしたところ、「猪突猛進」という言葉はネガティブな意味合いが強く、誉め言葉ではないことを知りました(たまたまラジオから流れてきました)。誉め言葉として使う時は、「勇往邁進」という四字熟語を使うのがベターなのだとか。
というわけで、「猪突猛進……改め、勇往邁進。我が道を行くアーティストに出逢える展覧会トップ3」、スタートです!

その1 東京ステーションギャラリー「吉村芳生 超絶技巧を超えて」(2018/11/23~2019/1/20)

山口県生まれの画家・吉村芳生 (1950~2013) の中国・四国地方以外の美術館では、初となる大々的な回顧展です。57歳にして遅咲きの画家としてブレイク、しかし、そのわずか6年後2013年に突然逝去してしまった吉村芳生。そんな彼の画業の全貌を明らかにすべく、初期から絶筆まで62件700点以上(!)が集結しています。
写真と見間違えるくらいに写実的な吉村芳生の作品。それもそのはず、こちらの《ジーンズ》という作品は、まずジーンズを接写した写真を大きく引き伸ばし、そこに鉄筆で2.5㎜四方のマス目を引きます。そして、そのマス目1つ1つの濃さを数値化し、それを1つ1つ紙に鉛筆で映すという途方もない緻密な作業を経て制作されたもの。対象物が写し取られる仕組みはプリンターとほぼ同じなので、写真のように見えるわけです。もはや画家というよりも、人間プリンター。

そんな気が遠くなるような作業を経て制作された作品が、会場を埋め尽くす光景は圧巻! 必見です!
展覧会のラストで紹介されているのは、代表作の〈新聞と自画像〉シリーズ。新聞の上に鉛筆で自画像を描いた作品シリーズです。なんと新聞はすべて模写。写真から文字まで、一字一句が正確に描き写されています。極めつきは、40mにわたって展示された《新聞と自画像 2009年》。


こちらは、先ほどの〈新聞と自画像〉とは違い、実際の新聞紙の上に自画像が描かれています。「じゃあ、ちょっとは楽じゃん♪」 と思いきや、2009年の新聞休刊日を除き、毎日休まず新聞を購入し、毎日休まずその日の新聞に自分の顔を描いたのだとか。その制作パワーには、ただただ驚かされます。

その2 世田谷美術館「ブルーノ・ムナーリ― 役に立たない機械をつくった男」(2018/11/17~2019/1/27)
ブルーノ・ムナーリ 《『みどりずきんちゃん』のためのイラストレーションとレイアウト》 制作年不詳(1972年) パルマ大学CSAC
© Bruno Munari. All rights reserved to Maurizio Corraini srl.Courtesy by Alberto Munari

ある時は、画家。ある時は、デザイナー。また、ある時は絵本作家で、著述家で、彫刻家。さらに、ある時は教育者……と多彩な顔を持つ20世紀イタリアを代表するアーティスト、ブルーノ・ムナーリ。そのマルチな活動を紹介する日本最大規模のブルーノ・ムナーリの大回顧展です。

撮影:若林勇人
写真提供:世田谷美術館

生涯を通じて子どもの心を持ち続け、生涯を通じて常に作品にユーモアを込め、一貫して「誰もが楽しみながら美術やデザインに触れ、そして自分でも創作できるようにする」という哲学を作品や活動に反映させたムナーリ。他のどのアーティストとも一線を画す、まさに唯一無二のアーティストです。
そんなムナーリの初期から晩年まで、日本初公開の作品を多数含む約300点もの作品が詰め込まれた会場は、まるで「おもちゃのカンヅメ」のよう。次に何が飛び出るかわからないワクワク感が味わえます。

ブルーノ・ムナーリ 《時間X》 1963年 ジャックリーン・ヴォドツ・エ・ブルーノ・ダネーゼ財団
Photo : Roberto Marossi. Courtesy Fondazione Jacqueline Vodoz e Bruno Danese
© Bruno Munari. All rights reserved to Maurizio Corraini srl.Courtesy by Alberto Munari

展覧会のラストには、ムナーリが開発した遊具を手に取って遊べるコーナーも。子どもはもちろん、大人にもオススメ。童心に返るチャンスです!

その3 水戸芸術館「霧の抵抗 中谷芙二子」(2018/10/27~2019/1/20)
[撮影]アートテラー・とに~

昨年、『第30回高松宮殿下記念世界文化賞』の彫刻部門を受賞された国際的なアーティスト、中谷芙二子さん(1933~)。彼女は、大阪万博ペプシ館で世界初となる「霧の彫刻」を発表しました。それ以来、水を用いた人工の霧を発生させ、大地に一定時間定着させるという唯一無二の「霧の彫刻」を一貫して制作し続けています。これまでに、80を越える霧の彫刻作品を世界各地で発表。2017年には、銀座のメゾンエルメスでの展覧会で屋内の「霧の彫刻」を発表し、大きな話題となりました。
そんな常にアップデートし続ける中谷芙二子さんの最新個展が、水戸芸術館で開催中です。今回の展覧会では、水戸芸術館内と水戸芸術館の屋外の2ヵ所で、「霧の彫刻」の新作が発表されています。館内の作品は、室内に霧が充満するだけでなく、その霧にある映像が投影されます。すると、あら不思議。まるで雲の上にいるかのような不思議な鑑賞体験が味わえるのです。新感覚の「霧の彫刻」でした。
また、屋外では、30分毎に広場の噴水に霧が発生。シュルレアリスムの絵画を彷彿とさせる光景が、目の前に! 二度見必至です。ちなみに、17時以降はライトアップver.が見られます。幻想的な光景に思わずうっとり。夜霧よ今夜も有難う。

撮影:山中慎太郎(Qsyum!)
写真提供:水戸芸術館現代美術センター

 

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アートテラー・とに~

1983年生まれ。元吉本興業のお笑い芸人。

芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、現在は、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動。

美術館での公式トークイベントでのガイドや美術講座の講師、アートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など、幅広く活動中。

アートブログ https://ameblo.jp/artony/

《主な著書》 『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社) 『こども国宝びっくりずかん』(小学館)

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