【アートテラー・とに~の今月コレを見逃しちゃいけま展!】作家もいいけどコレクションもね。「このコレクションがすごい!」展覧会トップ3

早いもので、2018年も残すところあと1か月。今年もたくさんの展覧会との出会いがありました。思い返してみれば、見逃さなくて良かった展覧会ばかり。プラド美術館展に、ルーヴル美術館展に、ミケランジェロ展に、それから・・・と、挙げればキリがありません。こうして僕らが展覧会を楽しむことができるのは、ひとえに美術館の皆さまや主催者の方々、そして、素晴らしい美術品をこの世に生み出した芸術家のおかげです。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。
あっ、お礼を言わねばならない人物が、他にも存在していました! それは、コレクター。彼らが美術品を蒐集していなかったら、僕らは美術品をまとまった形で目にできていなかったことでしょう。
そこで今回は、普段あまりスポットが当てられない美術コレクターに大注目! 題して、「作家もいいけどコレクションもね。『このコレクションがすごい!』展覧会トップ3」をお届けいたします。

その1 三菱一号館美術館「フィリップス・コレクション展」(10/17~2019/2/11)
ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル《水浴の女(小)》1826年 油彩/カンヴァス 
フィリップス・コレクション蔵 The Phillips Collection

アメリカを代表する私立美術館の一つ、フィリップス・コレクション。あのニューヨーク近代美術館よりも開館は早く、アメリカ初の近代美術館として1921年に開館しています。
そのコレクションの礎を築いたのが、ダンカン・フィリップス(1886~1966)。裕福な実業家の家庭に生まれ、高い見識も持っていたという天が二物を与えた稀代の美術コレクターです。アングルやドラクロワといった19世紀の巨匠の作品を蒐集する一方で、ボナールやブラックといった同時代の芸術家を経済的にサポートし、その作品を購入していたのだそう。そのようにして形成された世界有数の美術コレクションから選りすぐりの75点が、今展のために来日しています。

ピエール・ボナール《犬を抱く女》1922年 油彩/カンヴァス フィリップス・コレクション蔵 
The Phillips Collection

展覧会としてユニークなのは、展示作品の並べ方。一般的には、制作年代順に並んでいたり、国籍や様式・流派ごとにグルーピングされて展示されていたりするものですが、今回は、ダンカン・フィリップスが作品を蒐集した年順に作品が並べられているそうです。つまり、彼の美術コレクションがどのように形成されていったのかが追体験できる展示となっています。
「ダンカン。歳を重ねたら、趣味変わったな」「ダンカン。またこの画家の作品を買うのか」「ダンカン。名品ゲットしたなぁ」と、たけしさんばりに、ダンカンに心の中で語り掛けながら楽しむのもまた一興です。

その2 畠山記念館「原三溪-茶と美術へのまなざし」(10/6~12/16)
赤楽茶碗 銘 李白 本阿弥光悦作 江戸時代 畠山記念館蔵

横浜を代表する実業家にして、日本屈指の美術コレクター、横浜に三溪園を開いた人物としても知られる原三溪(1868~1939)。その鑑識眼は非常に高く、現在は東京国立博物館が所蔵している国宝の《孔雀明王像》を筆頭に、仏画や工芸品、茶道具といった古美術の名品を数多く蒐集し、日本国外に文化財が流出するのを阻止しました。ちなみに、原三溪は、当時今ほどに評価されていなかった琳派に、いち早く注目した人物の一人。本阿弥光悦や尾形光琳の作品も所有していたそうです。

小督局図 尾形光琳筆 江戸時代 畠山記念館蔵(11/10~12/16展示)

そんな原三溪のコレクションの一部を、三溪の死後に入手したのが、荏原製作所の創業者・畠山一清(号・即翁 1881~1971)。彼もまた実業家にして、美術コレクター。茶道具を中心に、日本や中国、朝鮮の古美術品を蒐集し、国宝や重要文化財を含む一大コレクションを築きました。それらのコレクションは、白金台にある畠山記念館にて公開されています。
さてさて、今年2018年は、原三溪の生誕150年の節目の年。それを記念して、現在、畠山記念館では20年ぶりに原三溪ゆかりのコレクション約50点を一挙大公開しています(展示替えあり)。コレクターからコレクターへ受け継がれた名品の数々を堪能する貴重な機会ですよ。

その3 泉屋博古館分館「神々のやどる器―中国青銅器の文様―」(11/17~12/24)
《虎卣(こゆう)》 商時代後期 泉屋博古館蔵

住友家15代当主にして、明治~大正期の関西を代表する美術コレクター・住友吉左衞門友純(号・春翠 1864~1926)。彼が特に力を入れて蒐集したのは、銅事業をルーツにする住友家らしく、中国古銅器と鏡鑑でした。その青銅器コレクションは、世界的にも高く評価されており、中国以外では質量ともに最も充実したコレクションとして知られています。ちなみに、泉屋博古館が「博物館」ではなく「博古館」なのは、中国の宋時代に皇帝の命により編集された青銅器図録「博古図録」に由来するから。まさに泉屋博古館の根幹ともいうべきコレクションなのです。
普段は鹿ケ谷にある本館で常設されている青銅器コレクション。その中から選抜された一級品の数々が、現在、特別に上京しています。青銅器と聞くと、なんだか地味な気がするかもしれませんが、その超絶技巧は一見の価値あり! 見ないと損するレベルです。また、人が虎に抱きついている(?)《虎卣(こゆう)》を筆頭に、シュールでキュートな作品も多数あります。摩訶不思議でファンシーな青銅器ワールドを、存分にお楽しみくださいませ。
ちなみに、受付にて、ミミズクをかたどった《鴟鴞尊(しきょうそん)》の精巧なレプリカが販売されていました。

《鴟鴞尊(しきょうそん)》 商時代後期 泉屋博古館蔵


皆様のコレクションにくわえてみてはいかがでしょうか?

 

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アートテラー・とに~

1983年生まれ。元吉本興業のお笑い芸人。

芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、現在は、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動。

美術館での公式トークイベントでのガイドや美術講座の講師、アートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など、幅広く活動中。

アートブログ https://ameblo.jp/artony/

《主な著書》 『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社) 『こども国宝びっくりずかん』(小学館)

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