【アートテラー・とに~の今月コレを見逃しちゃいけま展!】あの日に帰りたい? 昭和を懐かしむ展覧会トップ3

平成最後の夏が終わり、平成最後の「芸術の秋」が始まりました。いやはや、来年には平成が前の世代となってしまうのですね。ということは、昭和生まれの僕は……。あぁ、昭和は遠くなりにけり。
縄文土器や刀剣、茶道具など、歴史の教科書に出てくるような美術品を観られる展覧会もあれば、江戸時代や明治時代の絵画や工芸品を楽しめる展覧会、現在活躍する現代アーティストの作品に触れられる展覧会もあります。展覧会のいいところは、思いっきり昔から現代まで、いろんな時代を体感できること。そこで、今回は、ちょっと昔をテーマにした展覧会をフィーチャー。昭和世代の皆さまが、「あぁ、懐かしいなぁ……」という感覚に浸れる展覧会を紹介いたします。
題して、「あの日に帰りたい? 昭和を懐かしむ展覧会トップ3」です。平成最後の芸術の秋。あえて、昭和にタイムスリップしてみませんか?
その1 千葉市美術館「1968年 激動の時代の芸術」(9/19~11/11)

1968年 高松市美術館蔵 ©横尾忠則
今からちょうど半世紀前。東京オリンピックが大成功のうちに終わり、2年後には大阪万博が控えていた、日本が最も熱かった時代「1968年」に焦点を当てた展覧会。この時代は日本の現代美術界も激アツで、赤瀬川原平、高松次郎、横尾忠則、森山大道、関根伸夫らが、既存のスタイルを打ち破るような美術作品を次々と発表していました。中にはあまりに過激ゆえ、今の時代なら、いわゆるコンプラ的にアウトなものも(笑)
さらに、会場では美術作品だけでなく、『帰ってきたヨッパライ』のレコードや『ガロ』、『週刊平凡パンチ』、ガリ版印刷などなど、「1968年」前後のカルチャーも紹介されています。極めつけは、1968年にオープンし、川端康成や三島由紀夫、丹下健三ら各界の有名人が通っていたという伝説のサイケデリックディスコ『MUGEN』で行われていたというライティングショーの再現。しかも、ディスコサウンド付。

当時を知る人にとっては、「懐かしい!」が止まらない展覧会。当時を知らない若い世代にとっては、一周回って(二周回って?)新しい展覧会です。
ちなみに、1968年生まれの方は観覧料が500円になるそうですよ。
その2 世田谷美術館「民家の画家 向井潤吉 人物交流記」(9/8~11/4)

昭和を代表する洋画家・向井潤吉(1901~1995)。北は北海道から南は鹿児島まで、渡辺篤史ばりに日本全国の民家を巡っては、その姿を描き続けた「民家の画家」です。
彼が描いたのは、民家は民家でも、平成の今ではほとんど街中では見かけなくなった藁葺き屋根の民家です。向井潤吉の民家の絵をじっと見つめていると、どこからともなく囲炉裏の薪がはぜる音が聞こえてくるようです。どこからともなく味噌汁の匂いが漂ってくるようです(注:個人の感想です)。郷愁を感じずにはいられません。
ちなみに、こちらは10月21日までですが、世田谷美術館の2階の展示室では、「東京スケイプ Into the City」というコレクション展が開催中。1930年代以降の東京の風景を映した写真が、時代ごとに紹介されています。あの頃の銀座。あの頃の新宿。皆様の想い出に残る風景に出逢えるかもしれません。

その3 弥生美術館「集英社デビュー50周年記念 一条ゆかり展~ドラマチック! ゴージャス! ハードボイルド!~」(9/29~12/24)

1968年、『りぼん』3月号で漫画家デビュー。以来、『デザイナー』『砂の城』『有閑倶楽部』『プライド』など、少女漫画の歴史に残る名作漫画を次々に発表し続けている「少女漫画のクイーン」こと一条ゆかり氏。そのファン待望の大々的な回顧展です。
見どころは何と言っても、『有閑倶楽部』第一話のモノクロ原稿。全ページが一挙公開されています!さらに、挿絵や漫画、雑誌などの出版美術に特化した弥生美術館での展覧会だけに、雑誌デビュー前の貴重な貸本時代の作品や『りぼん』のふろくの原画なども展示されています。
会期中には、一条ゆかり氏本人によるトークショー「一条ゆかりのトークナイト!」も開催予定(詳しくは、弥生美術館HPで!)。少女時代に戻れること間違いなしの展覧会です。
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アートテラー・とに~
1983年生まれ。元吉本興業のお笑い芸人。
芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、現在は、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動。
美術館での公式トークイベントでのガイドや美術講座の講師、アートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など、幅広く活動中。
アートブログ https://ameblo.jp/artony/
《主な著書》 『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社) 『こども国宝びっくりずかん』(小学館)