【アートテラー・とに~の今月コレを見逃しちゃいけま展!】下から見るか? 横から見るか? 立体作品を楽しむ展覧会トップ3

突然ですが、皆様、一日何時間くらいパソコンを使っていますか? とある調査では、一日平均「約4時間」パソコンを使用しているのだそうです。さらに、スマホの一日の平均使用時間は、約3時間とのこと。つまり、一日7時間はパソコンやスマホの画面を眺めている計算となります。それに加えて、テレビを見たり、本や雑誌、新聞を読んだり、書類に目を通したり。あぁ、なんて平面の世界ばかり見ていることでしょう!
ということで、今回は、絵画や版画といった平面作品ではなく、立体作品に特化した展覧会をフィーチャー。題して、「下から見るか? 横から見るか? 立体作品を楽しむ展覧会トップ3」です。あらゆる角度からの鑑賞を、どうぞご堪能くださいませ。
その1 国立西洋美術館「ミケランジェロと理想の身体」(6/19~9/24)
理想の身体を表した古代ギリシャ・ローマとルネサンスの彫刻作品が集結。男が憧れる理想の肉体美がそこにあります。こんな身体になりたいなぁ。そう思いながら鑑賞している時、息を止めお腹を必死に引っ込めている自分がいました。理想だけでなく、現実も味わえる展覧会です。
見どころは何と言っても、「神のごとき」と称されたルネサンスの天才芸術家ミケランジェロの大理石彫刻作品。なんと2点が初来日しています! えっ、誰ですか? 「少なっ!」と呟いたのは? 完璧主義者で寡作だったせいもあり、ミケランジェロによる大理石彫刻は、世界でわずか40点ほどしか現存していません。しかも、その貴重さゆえ、所蔵元を離れること自体がレアケースなのです。

20世紀前半のスペイン内戦によってバラバラに破壊されたものの、長い年月をかけて修復された《若き洗礼者ヨハネ》もオススメですが、やはりミケランジェロの未完の傑作《ダヴィデ=アポロ》は圧巻。360度どこから見ても画になるとは、まさにこのこと。美術館で作品の周りをぐるぐる歩きながら、是非マイベストポジションを見つけてくださいませ。ちなみに、ちょっと変わったタイトルの由来は、ダヴィデなのか、アポロなのか、未だに謎のままだからなのだそう。隅々まで鑑賞して、自分なりに推理してみるのもまた一興です。
その2 東京都庭園美術館「ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力」(6/30~9/17)
アールデコの館・東京都庭園美術館の空間を飾っているのは、ブラジルの出版社であるBEIが長年かけて集めてきたブラジル先住民の一木造りの椅子コレクション。これらのコレクションがブラジル国外に出ることは、今回が初めて。実に貴重な機会です。

ブラジル先住民の椅子の特徴は、何と言ってもゆるカワイイこと。その多くが、ジャガーや猿、鳥、ワニにコウモリといった野生動物たちをモチーフにしています。座面は平ら。座り心地こそ、よくなさそうですが、造形作品としては本当にユニークです。いつまでも眺めていられます。椅子なのに。
展覧会の会場構成を担当しているのは、世界的建築家のあの伊東豊雄さん。彼の真骨頂が発揮されていたのが、新館の展示室の会場構成です。スペースを大胆に使い、周囲には椅子を、室内の中央にはたくさんのビーズクッションを設置。ビーズクッションに座ることで、鑑賞者と椅子の目線が合うようデザインされています。新感覚の鑑賞体験です。
その3 川崎市岡本太郎美術館「街の中の岡本太郎 パブリックアートの世界」(7/14~9/24)
今年もっとも話題の立体作品といえば、3月19日より内部公開がスタートした岡本太郎の《太陽の塔》ではないでしょうか。しかし、大阪は遠い。しかも、予約がなかなか取れない……。そんな皆様にオススメしたいのが、現在、川崎市岡本太郎美術館で開催中の展覧会。《太陽の塔》を筆頭に、東北から九州まで日本全国に点在する岡本太郎のパブリックアート作品の原型の数々をまとめて目にすることができる展覧会です。現存する作品はもちろん、残念ながら現存していない作品も紹介されています。それらの中には、岡本太郎が設計を手掛けた建造物で、2001年に解体された《マミフラワー会館》の模型も。2本の太い「大根足」が大きな建造物を支える姿はインパクト大。360度どこから見ても、べらぼうな建造物です。

ちなみに、川崎市岡本太郎美術館の敷地内には、高さ30mを誇る《母の塔》がそびえ立っています。宇宙に向かって何かのパワーを放っているかのような生命力に溢れた作品です。こちらも必見!
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アートテラー・とに~
1983年生まれ。元吉本興業のお笑い芸人。
芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、現在は、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動。
美術館での公式トークイベントでのガイドや美術講座の講師、アートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など、幅広く活動中。
アートブログ https://ameblo.jp/artony/
《主な著書》 『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社) 『こども国宝びっくりずかん』(小学館)