【アートテラー・とに~の今月コレを見逃しちゃいけま展!】母と一緒に行きたい展覧会トップ3

皆様、はじめまして。日本でただ一人、いや、世界でただ一人のアートテラー・とに~です。

アートテラーとは、アートの魅力をわかりやすく、かつ面白おかしくトークで伝える職業。「アート」と「ストーリーテラー」を組み合わせた造語です。ごくたまに、「アートテーラー」と呼ばれたりするのですが、スーツやシャツは仕立てられませんので、あしからず。

美術館でギャラリートーク(という名のネタ)をしたり、美術館を皆でわいわい巡るアートツアーを主催したり、アートに興味がない人にも楽しんでもらえるような活動を、なんやかんやしております。皆様とどこかでお目にかかるかもしれません。その時はどうぞよろしくお願いいたします!

さて、普段は、ほぼ毎日休まず展覧会を巡っています。東に人気の展覧会があれば行って鑑賞し、西にマニアックな展覧会があれば行ってその世界を堪能し。年間でのべ約600700本の展覧会は目にしているでしょうか。そんな僕が、毎月テーマに沿って独断と偏見で選んだ “今、観ておくべき”展覧会トップ3を紹介していこうというのが、今回から始まる新コーナー。その名も、「アートテラー・とに~の今月コレを見逃しちゃいけま展!」。

記念すべき第一回目、5月のテーマは、第2日曜日が『母の日』ということで、「母と一緒に行きたい展覧会トップ3」です。母も自分もお互い、もういい大人ですからね。今さら二人で遊園地や動物園に行ってはしゃぐこともないですし、映画館やコンサートに行って長時間隣り同士で座るのも気恥ずかしいですし。そういう意味では、適度についたり離れたりできる展覧会は、母と二人で行くのに打ってつけ!今回はその中でも特に母と行きたい展覧会をご紹介いたします。

 

その1 相田みつを美術館「言葉と筆をつなぐもの」(3/136/3

 

母に感謝の言葉を直接伝えるのって、恥ずかしいですよね。「いつも心配してくれてありがとう」とか「産んでくれて、育ててくれてありがとう」とか。そんなセリフを母の前で口にするシチュエーションを想像しただけで・・・・・顔が赤くなってきました。なので、毎年メールやメッセージカードでそっけなく済ませてしまっています。今年こそは、自分の素直な言葉で感謝を伝えないと! 

そこで是非母と行きたいのが、相田みつを美術館で現在開催中の展覧会。あの有名な『つまづいたっていいじゃないか にんげんだもの』をはじめとする相田みつをの飾り気ない力強い言葉の数々に、きっと心が揺さぶられ、いつしか心は丸裸にされているはず。気づけば、素直な気持ちで母に感謝の言葉を伝えていることでしょう。

なお、それでもまだ恥ずかしいという方は、『あなたにめぐりあえて ほんとうによかった』ではじまる詩が出展されていたので、この詩を黙って指さしてみては?照れ屋だもの。

 

その2 岡田美術館 「初公開 田中一村の絵画奄美を愛した孤高の画家」(4/69/24

 

  家事に子育て(孫の世話)に仕事に、といつも忙しい母に、気分をリフレッシュできる日帰り旅行をプレゼント。そう考えている方にオススメしたいのが、箱根の小涌谷に2013年にオープンした岡田美術館です。

現在開催されているのは、中央画壇とは距離を置き、50歳にして奄美大島へと単身移住した伝説の日本画家・田中一村(190877)にスポットを当てた展覧会。岡田美術館が収蔵する一村作品全点が初公開されています。さらに、一村と時代を超えて共鳴しあう絵師・伊藤若冲や東京美術学校の同級生でライバルでもあった東山魁夷の作品なども併せて紹介。まさに、美の殿堂にふさわしい豪華な展覧会です。特に必見なのが、奄美時代の一村が描いた《白花と赤翡翠》。絵の前に立った瞬間に、奄美の温度や湿度、匂いが感じられました(奄美に行ったことはないですが)。箱根旅行と奄美旅行。一挙両得で楽しめる展覧会です。

ちなみに、岡田美術館には、源泉かけ流しの本格的な足湯があります。鑑賞で足が疲れたら、是非こちらへ。

母と混浴なんて考えれないですが、まぁ、足湯なら・・・たまには。

 

その3 国立西洋美術館「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」(2/245/27
6/13~10/14 兵庫県立美術館に巡回
ディエゴ・ベラスケス 「王太子バルタサール・カルロス騎馬像」 1635年頃 ©Museo Nacional del Prado

今月もっとも見逃してはいけない展覧会は、やはり何と言っても国立西洋美術館の“プラド美術館展”。スペインを代表する画家ベラスケスの傑作が7点も来日しているこの春大本命の展覧会です!これほどまでに名品揃いのプラド美術館展は、もう二度と開催されないのでは?まだ訪れていないという方、今すぐにでも上野へ!二人の都合が合わなさそうなら、母と一緒に行かなくても大丈夫です(もはやテーマを無視!)。

スペインの王宮を飾ってきた名画で満たされた会場は、いつになく威厳と風格が漂っており、見知ったはずの国立西洋美術館が、まるで国立西洋美術館ではないよう。プラド美術館の名品だけでなく、プラド美術館の雰囲気までも来日しているかのようでした。母をスペインのプラド美術館に連れていくには、かなり親孝行しなければならないですが、プラド美術館なら気軽な親孝行で済みそうです(笑)

ちなみに、母と子で行かれる方は、アロンソ・カーノの《聖ベルナルドゥスと聖母》という作品に要注意!

アロンソ・カーノ 聖ベルナルドゥスと聖母 1657-60年 マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

12世紀の神学者・聖ベルナルドゥスに起きた奇跡を描いた一枚です。その奇跡とは、次のようなもの。

ある日、マリア様を特に篤く信仰していた聖ベルナルドゥスが、「あなたの母たることをお示しください」 と聖堂で祈りを捧げていたところ、聖母マリアの彫像が動き出し、ベルナルドゥスの唇に自分の乳房をあてがい、乳を飲ませたのだそうです。

・・・・・いや、どういう奇跡?ピューッとダイレクトで口に?

ともあれ、母と鑑賞中に、いきなりこの絵が現れると、間違いなく気まずくなります。お茶の間にベッドシーンが流れるような。母が「あんたも赤ちゃんの時は私の・・・」なんて話し始めたら、もう地獄!

 

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アートテラー・とに~ 

1983年生まれ。元吉本興業のお笑い芸人。

芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、現在は、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動。

美術館での公式トークイベントでのガイドや美術講座の講師、アートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など、幅広く活動中。

アートブログ https://ameblo.jp/artony/

《主な著書》 『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社) 『こども国宝びっくりずかん』(小学館)  

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