レポート

談ス/NUDEレポート 大植真太郎・森山未來・平原慎太郎が美術館で挑んだ、一夜限りのパフォーマンス

 

「談ス/NUDE」公演ノーカット映像を限定公開中。

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横浜美術館の休館日にあたる45日、パフォーミングアーツの世界で異彩を放つ3人のダンサーによる公演を「ヌード NUDE -英国テート・コレクション」展とあわせて鑑賞できる、一夜限りのスペシャル企画『談ス/NUDE』が開催された。あっという間に一般券が完売した貴重なチケットを手にした観客の多くは、公演に先駆けてまずは展覧会を鑑賞。西洋における裸体表現の歴史をたどりながら、ヌードの持つ意味を浮き彫りにしていくこの展示を見て、公演の内容を想像できた観客は少ないだろう。「ヌード」展からインスピレーションを得て創作した公演といっても、舞台上で実際にヌードになるわけにもいかないなか、彼らは一体どんな表現を見せてくれるというのだろうか――。吹き抜けのグランドギャラリーに設けられたステージの周りを、期待に胸ふくらませた観客が囲むなか、いよいよ公演が始まった。

 

 

真っ白いステージの上には、シンプルなカウンターテーブルが一つと、同じくらいの大きさの黄金の丸が一つ。四方を囲んでいた客席――といってもオールスタンディングで、実際に席があるわけではない――の間から、3人がごく自然な様子で登場してステージに上がり、そのまま無音のなかで、独特の動きの連続によって観客の目を引き付けていく。格闘技のようにも組体操のようにも太極拳のようにも、あるいは知恵の輪のようにも見える彼らの動きが強烈に印象づけるのはやはり、身体というものの不思議さと面白さ。なるほど、“ヌードの持つ意味”を“裸体表現”ではなく、身体表現によって浮き彫りにしようというわけか。

 

 

大植真太郎、森山未來、平原慎太郎という、出自も個性も大きく異なる3人が感じさせる身体の不思議さ、面白さをさらに際立たせていたのが、初め黄金の丸に見えていた物体だ。床へのペイントかカーペットかと思われたものが、公演が進むにつれ、非常に柔らかいスライム状のものだったことがわかる。その黄金のスライムを、3人は折りたたんだり分断したり、カウンターテーブルの上に置いたり、ちぎって床に投げつけたり、さらには餅に見立ててテンポよくついてみたり……。そして約1時間に及んだパフォーマンスの終盤、スライムはなんと、大きな塊の状態でうつむいた大植の首の上に。まるで泥が徐々に垂れ流れていくように、やがて肩や頭部を覆っていき、ついには大植をほぼすっぽりと隠してしまった。

 

 

 

なんというユニークな幕切れ、と思いきや、まだ終わりにはあらず。黄金のスライムに覆われた大植を放置し、森山と平原はカウンターテーブルの脇に自ら椅子を運び入れ、会話をはじめる。彼らが“エゴと自我の違い”について軽妙なトークを繰り広げる横で、大植は自らにまとわりつくスライムを静かに、少しずつ取り除いていく。ところがこのスライムには粘着性があるため、着ていた衣装も一緒に取り除かれてしまい、大植は徐々にヌードの状態へと近づいていくのだ。下着1枚になった大植がその下着をも外そうとすると、軽妙にトーク中だった森山と平原が慌てて飛んできてテーブルと椅子で大植を隠す、というのが本当の幕切れ。コミカルでありながら、テーマに見事に立ち戻ってもいる周到な“オチ”に、観客からは惜しみない拍手が贈られた。

 

 

 

展覧会入口で1枚。

 

公演後、囲み取材に応じた3人の主なコメントは以下の通り。

 

大植 美術作品の置き方、静かな空間などから内容を作り上げていった。激しい動きは極力せずに、静止する時間の多さや、〈ゆっくりと、ゆがんでいく〉動きを意識しました。

 

森山 展覧会を観て、作品だけではなく時代の社会性や、それらがつながっていく文脈を強く感じた。裸を描くことの裏側にあるテーマを、パフォーマンスでも大事にしました。

 

平原 今回の劇場は360℃観られるかたち。前や後ろがないのと同じように内側と外側の境界線がなく、むしろ体の中に意識が向かう感じが出せたのではないかと思っています。

 

一夜限りのスペシャル企画に、充実の表情を浮かべていた。

 

文/町田麻子

 

 

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