一夜限りの「談ス/NUDE」 アーティストが語る ソウル視察レポ<前編>

「ヌード」にどう挑む?

 

国内外のトップシーンで活躍するパフォーミングアーティスト、大植真太郎・森山未來・平原慎太郎。世界を舞台に稀代の身体表現力で勝負してきた男たちが、2014年に立ち上げたパフォーマンス「談ス」は、ダンス、芝居、アート、コント、異種格闘技、男子のじゃれあい、いずれにも限定されない独特の舞台作品として、初演と同時に各界で物議を醸した。

 

 

2016年には全国15都市を駆け抜け、上演を重ねたこの「談ス」シリーズ。20185月から6月にかけて、待望のシリーズ第3弾の上演が予定されている。

 

 

これに先駆けた45日(木)、一夜限りの新作パフォーマンス『談ス/NUDE』が、横浜美術館グランドギャラリーで開催される。ロンドンのテート・コレクションの企画により世界各国の美術館を巡回する「NUDE」展のスペシャル企画だ。

 

 

西洋美術史の中でもっとも普遍的な表現のひとつといえる「ヌード」というテーマに、一癖も二癖もある3人の『談ス/NUDE』がどのように挑むのか?

 

 

ヌード展ソウル会場 視察の様子 ※1

 

2017年12月、韓国ソウルに巡回中の「NUDE」展を鑑賞する視察旅行にて彼らの意気込みを聞くことができた。一泊未満(平原慎太郎は日帰り)の超弾丸ツアーでさすがのフットワークを見せつけた3人。

 

 

まずは空港から「NUDE」展会場へ向かう中、大植真太郎と森山未來が本プロジェクトのファーストインプレッション、そして「ヌード」というテーマについて語った。

 

 

「欧米のバレエやコンテンポラリーダンスの舞台では、ヌードで踊ることは特に目新しいことではないんです。シドニーのダンスカンパニーには全裸で踊る作品もある。オーディエンスの中には劇場でヌードを鑑賞できることにそそられてくる人もいますね」(大植)

 

 

「今回のプロジェクトは美術館で行われるものだから、そこにはレイヤーがありますよね。絵画のなかの非現実世界のヌードと、パフォーマンスという現実世界の身体表現がどう重なるのか、重ならないのか?」(森山)

 

 

2人が考える「ヌード」

 

たしかに欧米のパフォーマンスシーンにおいては身体表現はもはや「なんでもあり」。その自由度は行き着くところまで行った感がある。西洋と東洋のあいだには「ヌード」そして「身体」をめぐる歴史的・文化的な差異がいまも横たわるのだろうか。

 

 

「西洋文化にはキリスト教が深く根差しています。アダムとイブが裸のままエデンの園を追放された聖書の物語以来、人間が背負ってきた〈原罪〉の意識がベースにある。欧米人が堂々とヌードになるのはその罪の意識から脱却することでもあるのかもしれません」(大植)

 

 

「日本の場合、明治以前の社会では、ヌードというか、裸というものがもっとおおらかに捉えられていたような気がしています。罪でなく日常、エロよりも自然。『談ス/NUDE』では日本文化に根差したリアルなヌード観を出していくことになるんじゃないかな」(森山)

 

 

12月某日。横浜美術館に3人が集まり、会場を下見した。

 

 

たとえば、日本の舞踊文化特有の一様式である「舞踏」は、男も女も白塗りの異形で、小さな腰巻きを股間に着けた全裸に近い姿で踊るが、そこにエロティシズムを感じる人はほぼ皆無だろう。欧米でも、ダンサーたちの極限まで鍛えぬかれた身体性は、その造形美こそ素晴らしいが、かならずしもエロスを匂わせるとは限らない。「ヌード」と「エロティシズム」の関連性とはどこにあるのだろう。

 

 

「西洋文化にも〈チラリズム〉ってあるのかな? ワークショップで、ダンス経験の少ない人とコンタクト・インプロビゼーション(互いに身体を触れ合わせ体重移動によって動くダンスのテクニック)をするとき、相手の恥じらいが伝わってきて、しだいに身体が開かれていく過程でエロティシズムを感じることがあります。その瞬間ぐっときて、うっかり恋に落ちそうになったり(笑)」(森山)

 

 

 

つまりエロスとは抑制された身体にこそ宿るものなのだろうか。

 

 

 

ところで大植真太郎といえば、これまで多くのパフォーマンスで、感極まって(なのか?)みずから「脱ぐ」ことでも知られている。今回、大植はどのタイミングで脱ぐのか? 脱がないのか?

 

 

「小学生の頃、よく校庭の真ん中で1人で裸になったりしてました。友だちとふざけあってとかでなく、自分で脱いでしまうんです。気持ちが解放されて楽しくなると脱ぎたくなりません?」(大植)

 

 

横浜美術館内を動きまわり、パフォーマンスのイメージを膨らませる。

 

 

5月にスタートする『談ス』シリーズ第三弾のタイトルは『』。制作スタッフの会議では誰も読めなくて微妙な空気が流れるそうだが、このコンセプトにも「ヌード」の謎を解く鍵が隠されていそうだ。

 

 

「どう読んでもいいんです。縦横、右左どっちからでも読めるのは日本語ならでは。海外から入ってくる文化を吸収し、編集を重ね、自分たちの文脈にさらりと取り込むことができるのは日本の特徴ですよね」(森山)

 

 

そんなフレキシブルな骨格をもつ『談ス』の「NUDE」展バージョン。次回はいよいよ展覧会鑑賞後、3人が思い思いにその印象を語る。

 

インタビュー・文:住吉智恵(アートプロデューサー、ライター)

 

一夜限りのダンスパフォーマンス「談ス/NUDE」の公演・チケット情報はこちら

 

 

 

 

 

大植 真太郎(Oue Shintaro) ※写真中央

 

1975年、京都府出身。17歳で渡独以降、ダンサーとして活躍し、2006年より創作活動開始。2008C/Ompany立ち上げ。現在はスウェーデンを拠点に、日本、オランダ、イタリアで活動を展開。ダンサーとしてローザンヌ国際バレエコンクール入賞。振付家として2005年、ハノーバー国際振付コンクール最優秀賞など多数。

 

 

森山 未來(Moriyama Mirai) ※写真右

 

1984年、兵庫県出身。数々の映画・ドラマ・舞台に出演する一方、ダンス作品にも積極的に参加。文化庁文化交流使として2013年より1年間、主にイスラエルに滞在、ベルギーほかヨーロッパ諸国にて活動。映画「怒り」にて第40回 日本アカデミー賞助演男優賞受賞。第10回 日本ダンスフォーラム賞 2015受賞。

 

平原 慎太郎(Hirahara Shintaro) ※写真左

 

1981年、北海道出身。2007年より国内を中心に振付家、ダンサーとして活動。ダンスカンパニーOrganWorksを主宰。演劇作品にも関わる。2011年韓国国際モダンダンスコンペティション最優秀振付家賞受賞、2015年小樽市文化奨励賞、2016年トヨタコレオグラフィアワードにて次代を担う振付家賞、オーディエンス賞をW受賞。

 

 

 

 

 

※1 オーギュスト・ロダン《接吻》(部分) 1901 4 年 ペンテリコン大理石 Tate: Purchased with assistance from the Art Fund and public contributions 1953

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