北斎VS広重 いっき見! 「富嶽三十六景」と「東海道五十三次之内」

山口県

風景画の巨匠、葛飾北斎(1760~1849)と歌川広重(1797~1858)は、浮世絵を代表する絵師というだけではなく、日本文化を象徴する芸術家として、国内外で高く評価されている。そして北斎の「富嶽三十六景」と広重の「東海道五十三次之内」はそれぞれの代表作であり、また日本の風景版画の傑作としても並び称されている。本展は、山口県立萩美術館・浦上記念館が所蔵する両シリーズを、全図「イッキに」味わえるという贅沢な試みだ。
北斎は、生来の独創的な個性と卓越した描写力に加えて、西洋絵画の表現手法を学習するなど、新たな表現に生涯挑戦し続けた。「富嶽三十六景」は、70歳を過ぎた北斎晩年の作品だが、伝統的な名所絵の定型表現から脱却し、見る人の意表を突く奇抜な構図や、ベルリンで発明され当時はベロ藍とよばれたプルシアンブルーを用いて、鮮やかな青色のグラデーションを見どころとする藍摺を行うなど、創造力にあふれたシリーズである。今回は、表富士とよばれる当初に企画・出版された36図を展示する。
広重は35歳頃に手がけた「東海道五十三次之内」のシリーズが大好評となり、風景画家としての知名度を高めることとなった。四季の移ろいや天候の変化、海や山などの雄大な自然に触れたときに感じる感慨や、旅に出て感じるしみじみとした情趣を巧みに表現した広重の風景画は、見る人に親しみと穏やかな安らぎを感じさせる。しかし広重もまた構図やモティーフの形や配置、色彩表現などに創意工夫を凝らすことで、詩情豊かな風景画を実現させているのだ。今回の展示では、「東海道五十三次之内」の宿駅53図と江戸と京都の2図を加えた全55図を展示する。
本展は、北斎と広重の代表作である2つのシリーズを同時に紹介する大変貴重な機会となる。2人の巨匠の個性と魅力を最大限に発揮した、日本が世界に誇る浮世絵の傑作を存分に楽しんでほしい。

開催概要