Alex Da Corte Fresh Hell アレックス・ダ・コルテ 新鮮な地獄

石川県

現代は、あらゆる場所が視覚に訴える様々なイメージで埋め尽くされている。感情や時間や空間など、本来は見ることが出来ないものまで視覚化しようという中で、クリエイターや発明家は、妄想の世界に分け入っては、より深い物語を伝えるにはどのようにしたらよいか、人間の深層心理に働くイメージとは何かについて、絶えず思考している。
アレックス・ダ・コルテは、自分にとってなじみ深いと感じるオブジェやアイコンと戯れながら、それらの本来の意味を解体/再構築する作品で知られる作家である。テレビ、映画、コミック、アニメーションなどを中心に大衆文化や消費文化、美術史、デザインなど、様々なソースからインスピレーションを得る点に特徴があり、映像、彫刻、絵画、インスタレーションなど多様なメディアを駆使しながら、アメリカ中産階級の視覚文化をサンプリングしている。どの手法においても鮮やかな色彩と形にこだわりが見られ、見慣れたモチーフも美術史に関する広範な知識と繊細で独特な感性によって、濃厚で優美なアッサンブラージュとなる。人々を誘引する魅力がある一方で、孤独や不安といった、言葉に出来ない人間の情感にも訴え、理性的に整理された領域でなく、奇妙な妄想の世界で人々を踊らせるような魅力をまとっている。
アジアの美術館で初めてとなるアレックス・ダ・コルテによる本展では、最近作を含めた全11点の映像インスタレーション作品などを紹介。圧倒されるような大きな箱型のスクリーンに投影される、様々にサンプリングされたイメージは、実体も無く、コケティッシュでおかしいのだが、深く関わるほど心がかき乱されるような不思議な魅力がある。「新鮮な地獄」とは、視覚情報が押し寄せる中で、現代社会の消費文化を定義するようになった欲望と記憶と知覚の関係にも踏み込み、氾濫するイメージがもたらすものは何か、といった問いにも、私たちを向き合わせている。

開催概要