河本五郎 - 反骨の陶芸

東京都

河本五郎(1919~1986)は日本社会が新たな価値観を模索する戦後から高度経済成長期を背景に、既成の技術や概念を客観的に捉える論理的な思考で、現代における陶芸を追求した。1000年以上の歴史を持つ陶磁器の生産地、愛知県瀬戸市に生まれ、幼少より瀬戸の窯業に身を置くが、個人の創意で陶磁器の伝統や歴史に対峙する。
河本の制作は、初期において家業の染付磁器に個性を発揮した作品があるものの、大きくは前半の陶器と後半の磁器に分かれた。陶器では、土の粗い表情や裂け目、歪み、ひずみを生かし計算し、様々な方法で素材感や物質感をダイレクトに造形化する作風を確立した。成形技法としてロクロに重きを置いた当時の瀬戸において、作りたいものに合わせて土や技法を選択、または開発する河本の姿勢は異質なものであった。
家業とは異なる制作で作家として自立した河本だが、意志ある姿勢はそのままに、しかし陶器から磁器へと制作を移行させる。そして、瀬戸の染付磁器と更にそのルーツとなる中国陶磁への考察をもとにしながら、現代の陶磁器として独自の染付と色絵に取り組んだ。それは自らの制作で陶磁の伝統や歴史に迫り、乗り越え、進展させようとする行為であったといえる。
本展は、東京で開催する没後初めての回顧展。陶磁器を表現素材と捉え、その創作に真摯に向き合った初期から晩年までの70余点で河本五郎の陶芸を紹介する。

開催概要