吉野祥太郎―立てる記憶―

アーティスト・吉野祥太郎(1979~)の主題は「土地の記憶」である。吉野は国内外において、土地と人との関わりをたどりつつ、その土地を成立させている記憶との対話を通して、大規模なインスタレーション作品や立体作品などの制作をおこなっている。また彼は、土それ自体に記憶が堆積していることを強く意識し、土を表現素材としてもちいるほか、記憶の層としての土を地面ごと持ち上げ「立てる」というインスタレーションも世界各地で実践している。
吉野はこれまで、来訪者として各地に赴き、新たな視座からその土地の記憶を見いだし、大切に持ち上げることによって、作品へと具現してきた。いっぽう、本展の開催地となる吉祥寺は、吉野が幼少期から親しみ、時を過ごしてきた土地であり、いうなれば、彼自身の記憶も吉祥寺という土地の一部を成している。彼は今回の作品制作に向けた取材の過程で、生まれ育った人、移り住んできた人、通勤している人、たまたま訪問した人など、吉祥寺を行きかうさまざまな人びとに会い、吉祥寺に存するさまざまな記憶に触れてきた。それはとりもなおさず、吉野自身の記憶を再認し、現在の吉祥寺に積み重ねなおす作業であったに違いない。
吉野祥太郎の新展開となる本展は、大小の彫刻作品とインスタレーションによって構成される。吉祥寺という土地に堆積し、いままさにこの土地を「吉祥寺」として立ち上げる無数の記憶のうえに、吉野は新たな記憶を立てる。吉野の作品をとおし、私たちもまた、私たち自身の素地にある記憶と向きあい、ふたたび持ち上げ「立てる」こととなるだろう。その体験はまさに、自己存在の再発見でもあるはずだ。
開催概要
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会期
2023年4月15日(土)〜5月28日(日) -
会場
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観覧料金
当日一般300円
詳細は公式サイトへ
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休館日
4月26日
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