広重vs五葉 甦る浮世絵風景版画の傑作~復刻『保永堂版 東海道五十三次』

鹿児島県

歌川広重(1797~1858)は、江戸後期に活躍した浮世絵師。一方の橋口五葉(1881~1921)は、大正期に江戸期の錦絵(多色摺り木版画)の技法を用いて優れた美人画を制作したことから「大正の歌麿」と称され、熱心な浮世絵研究者として江戸期の名作の復刻にも尽力した。
広重が活躍した江戸後期は、交通網の発達と経済的なゆとりから庶民の旅行熱が高まり、街道を描いた錦絵のシリーズが多数生まれた。中でも、江戸と京都を結ぶ東海道は最もよく描かれ、人気の火付け役となったのが広重の保永堂版『東海道五拾三次之内』〔1833~34(天保4~5)年頃発行〕であった。風景描写に季節や気象の変化を取り入れ、街道沿いの景色を抒情的に表現したこの作品によって、広重は一躍人気の風景画家となり、葛飾北斎と共に幕末の浮世絵界をリードした。
本展では、1918~19(大正7~8)年に五葉が編纂監督し岩波書店から発行した復刻『広重畫 保永堂板東海道五十三驛風景續畫』に収録された木版複製全60枚を展示。人気ゆえに江戸期に膨大な枚数が摺られたこのシリーズは、後の摺りになるにつれて版の摩耗や色の変更によってオリジナルの雰囲気が損なわれたものもあったため、五葉は復刻にあたり、複数の摺りから最も良くできたものを選び、紙も広重が選んだものに近いものを採用するというこだわりを見せている。
五葉の浮世絵研究資料や復刻のための下絵等とあわせて紹介することで、広重の風景画の抒情美と、浮世絵の研究と復刻にかけた五葉の情熱を堪能できる。

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