花侵庵と現代作家:No.1 志村信裕

東京都

はけの森美術館の裏手にある美術の森緑地には、洋画家・中村研一(1895~1967)の住んでいた主屋(現附属喫茶棟)と並んで、茶室「花侵庵」がある。絵を描くことと同様に、暮らしの一部として「作陶」や「喫茶」を楽しんだ中村が1961年に建てたもので、主屋と同じく建築家の佐藤秀三(1897~1978)が設計を手掛けた。両建物とも、小金井市初の国登録有形文化財(建造物)だ。<花侵庵と現代作家>は、この「花侵庵」を会場に、現代アーティストによる作品展示を行うプロジェクトとして発足。第一弾の本展では志村信裕(1982~)による映像作品が茶室空間に展開する。
志村は、日常生活の中の身近なもの―ボタン、リボン、バケツ、古書など―をモティーフに、またときにそれらをスクリーンとして用い、鑑賞者の思い出やそれらに付随する気持ちを想起させる映像インスタレーションを発表してきた。近年は、特定の地域に根ざした文化や歴史をテーマにリサーチを行い、その場所の目には見えない側面を引き出し提示する作品を制作している。記憶や歴史といった「過去」を扱う志村の世界観は、なきものへの懐かしさや恋しさを感じさせながら、「今」という現実を静かに語り、そして「これから」についての想像を私たちに促す。今回、普段は意識が向かないところに目を向かせてくれる志村の作品が、茶室という空間とどのように呼応し、私たちの目前に現れるだろうか。さらに普段非公開の同館2階ラウンジでは、志村による45分の映像作品《Nostalgia, Amnesia》(2019)を含む展示が楽しめる。

開催概要