東京都

所蔵作品展 画家の仕事と手遊び 中村研一、はけの日々

p_data_0216

画家の仕事が何かと言えば、それはもちろん絵を描くことだろう。洋画家・中村研一(1895~1967)は本格的に画家を志す際に父から「売り絵は描くな」という趣旨のことを言われたといい、生涯そのための個展をしなかったという逸話がある。この真偽はともかく、中村が、公募展や、所属していた光風会の団体展を主たる作品発表の場としていたことはたしかである。例えば同館所蔵作品のなかでも、ちょうどこの時期にぴったりな《早春》(第48回光風会展出品)や、おしゃれな水着のデザインが印象的な《夏》(第6回親日展出品)は、そうした展覧会への出展作品として制作されたものだ。こうした油彩画における明快な色調、モティーフのフォルムをはっきりと太いアウトラインで捉えた表現は、いかにも「中村研一らしい」画風だと言えるだろう。
他にも、コラムや新聞小説の挿絵、本の装丁など中村研一は多様な依頼を手掛けており、中には印刷に回すことを想定して余白にその際の指示が書いてあるカットもある。一方で、当然ではあるが中村研一はその描くという行為の全てを仕事と捉えていた訳ではない。日々の暮らしの中では、発表を意図したわけではない多くのスケッチや水彩、そして時には油絵が生まれた。手紙に絵を描き添えたり飼い猫の姿を板絵にして贈ったり、それらは日々の愉しみ、生活への愛着であると言える。
また、画業とは性質を異にしながら、中村研一が熱心に打ち込んだものとして作陶を忘れることはできない。若いころから古陶磁に惹かれ蒐集していた中村は、小金井転居頃から自ら作陶を行うようになった。各地の窯元を訪ねて土をひねり、絵付けをした自作は、茶室に飾る花活や水指、あるいはコーヒーを味わうデミタス・カップといった自らの暮らしのためのものだった。本展では、こうした制作を、「手遊び(てすさび)」と捉える。画家としての文字通りの生業である絵を描く「仕事」と、日常をいつくしむとともに愉しむ「手遊び」。その両側面から、中村研一の人間的魅力を概観する。

開催概要

直前の記事

最新一覧

美術展一覧へ戻る