東京都

まちへ出よう展 〜それは水の波紋から始まった〜

旧都営青山北町アパート(まもなく取り壊しが予定されている)には、高さ20メートルの給水塔があり、中国人アーティスト、ホワン・ヨンピン(1954~2019)はその上に竹で出来た5メートルの大仏を設置した。大仏には100個以上の小さな鈴が付いていて、夏の夕暮れ、風で一斉に鳴り響き、辺りは地元の人たちの大切なスポットになった――――これは1995年、次々と画期的な展覧会を発信し注目を集めていたキュレーター、ヤン・フート(1936~2014)とワタリウム美術館が協力し、青山、原宿の街中の40箇所に現代美術の作品を設置した「水の波紋95」展(※)の様子だ。それぞれのサイトに作品が置かれた30日間、そこには魔法が掛けられたかのように不思議な空気があふれ、さまざまな出来事が起きたという伝説の展覧会だった。
2021年、コロナ禍に翻弄され、経済や政治、コミュニケーションや人の考え方までもが大きな変化を余儀なくされている。そうした中、今回の「まちへ出よう展」は、屋外40箇所で展開した「水の波紋95」展を再び呼び覚まし、その源流となった作品をたどり、さらに2021年のアーティストたちが集結、様々な方法や時代精神を作品に託し、それら全てが融合し、次なる波紋へと広がって行くことを目指している。

※「水の波紋」とは水面に落ちた一粒の水滴が波紋となりゆっくりと広がっていくように、街に設置したアート作品が多くの人たちの心に届くことを願って付けられたタイトル。1995年、大都市の中心部で街全体を会場として使ったこの展覧会は世界でも他に類を見ない挑戦的なものだった。加えて1995年という年は、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件などが次々と起こり、東京が異様な緊張感に包まれ、展示は困難を極めた。都市における行動の自由や場所のあり方、安全についても改めて考えさせられた展覧会となった。

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