東京都

十時啓悦 ― 樹木と漆と暮らし

本展では、暮らしの中の漆器、主に椀、盆、皿、菓子鉢、酒器などの食器を中心に、十時の新作と近作を紹介する。制作にあたって十時は現代の暮らしの中で生きるものを作りたいと常に意識し、毎日の生活を彩る実用品として手に取りやすくするために高価な素材は使用せず、無駄のない手数とシンプルな仕上げで作品を制作している。一方で、それぞれの器に個性を持たせて「飽きさせない」ようにしている。
伝統工芸における技法を踏襲しながらも、十時が模索してきた自身の表現がこうした個性につながっている。十時がよく用いる技法の一つ、「根来塗」では黒漆の上に朱漆塗りを施し、表面の朱漆を磨くことで中の黒漆を所々に露出させる。ここに研磨の一手間を加えることで、十時は使い込んだ漆器に見られるような漆の掠れを表現する。別の「錆付け」という技法では、通常は砥の粉という土の粉を混ぜた液状の生漆を木製の素地に塗って下地にするが、十時は本来であれば表に出ることのないこの下地を、あえて風合いのある肌として作品に生かしている。
十時のものづくりは、多くの人が長い間、日常の中で愛用できるようにと、伝統技法の追求という枠を越えて、木と漆が織りなす“もの”としての「用の美」を追求してきた。本展では、木と漆という自然素材が見せる表情の豊かさ、暮らしに彩りを添える調度品としての魅力を紹介すると同時に、作品の制作方法や工程についての解説展示によって、十時特有の技法を紐解く。

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