東京都

トランスレーションズ展 −「わかりあえなさ」をわかりあおう

翻訳とは通常、ある言語で書かれたり話されたりする言葉を、別の言語に変換することを指している。しかし、一つの言語で言葉を発するプロセスそれ自体も、一種の翻訳行為とみなすことができる。
このような翻訳を行う時、誰しもが少なからず「うまく言い表せない」もどかしさを感じる。わたしたちは常に、精一杯の語彙や身体表現を用いて、沸き起こる様々な感情をなんとか他者に伝えようとするが、そもそも自分でも完璧にその感情を翻訳しきれることはないのである。
コンピュータが精確にデジタルデータを複製したり転送したりするようには、わたしたちは情報を伝えることはできない。わたしたちのコミュニケーションには、根源的な「わかりあえなさ」が横たわっていいる。それでも、わたしたちは互いの「言葉にできなさ」をわかりあうことはできる。別の言い方をすれば、わたしたちがどのように自分の感覚を翻訳しようとしているのか、という過程についてもっと知ることができれば、「わかりあえなさをわかりあう」ことができるであろう。
人は幸いにして、表現のしづらさをバネにし、新たな「言葉」をつくり出すことで、それまでできなかったような翻訳を行えるようになる。この展覧会では「翻訳」を、わかりあえないはずの他者同士が意思疎通を図るためのプロセスと捉えて、普段から何気なく使っている言葉の不思議さや、「誤解」や「誤訳」によってコミュニケーションからこぼれ落ちる意味の面白さを実感できるような、「多種多様な翻訳の技法のワンダーランド」をつくろうとしている。
この展示を体験し終えた後、あなたの中ではどのような翻訳の可能性が芽吹くだろうか。この世界に存在するありとあらゆる事物と心を通わせるための、未だ見ぬ言語を想像してほしい。

開催概要

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